スマートフォンのアプリで、 星座の名前を見られるものがある。 この部屋に越してきてから、 あかりに言われてインストールを したのだった。

私たちは大学の同期なのだけど、 あかりが彼氏と別れたあたりで、 私にルームシェアの声がかかった。 なぜ私だったのかはわからない。 あかりに聞いても「なんとなく」 と答えそうだし。

私はといえば、そろそろ実家を 出て一人暮らしを…と考えていた ところだったので、渡りに船、と あかりが持ってきた物件に 二つ返事でOKを返したのだった。

二人で住むのなら家賃は折半で、 リビングは広いほうがいい。 洋服はリビングに大きな棚を置いて そこにまとめておいて、下着だけは 自室にしまうルールにした。

それから、バルコニーには、 極力ものを置かないようにしよう。

曰く「共用スペースは、がらんと しているぐらいがちょうどいい」 ということだった。

こんな広いバルコニー、 どうやって使うんだろう。 暮らし始めた頃からずっと 考えていたけど、最近は、 使い方が少し分かってきた。

「今日は月がきれいだよ」 と、あかりが声を弾ませる。 こういうときのために買ってある レジャーシートを広げて、 がらんどうのバルコニーに、 二人で寝っ転がる。

「ほら、あのアプリ」 「星座見るやつ？」 iPhoneを取り出してみれば、 肉眼では捉えられない星座たちが 液晶に数多表示されている。

「うん。これで見れば、二人だけで プラネタリウムに来たみたいだよ」 「プラネタリウムっていつ行っても 私の地元は空いてたけどね」 「ロマンがないな、みっちゃんは」 と、あかりが笑った。