どろぼう入門。
この物件は現在は募集終了している可能性が高いです。過去物件のアーカイブとしてお楽しみ下さい。
「屋根の有無」により、前者ならば
ベランダ、後者ならばバルコニー、
そう分類されることを知った。
つまり我が家はバルコニーなのだ。
洋室からリビングへ、中のドアを
使わずに屋根の無い外部を通れば、
自分の家なのになにか悪いことを
しているという錯覚がある。
昔、絵本や教科書で見たような
泥棒というのは、こういうふうに
外から侵入して来たのだった。
こちらのリビングにはテーブルと
椅子、簡素な棚を置いたが、
向こうの洋室にはベッドのみ。
寝るときか、先程のように
ぼんやりする時以外には、
向こうの洋室に用がなかった。
バルコニーからの連想ゲームで
言うのなら、泥棒は、そういえば
窓の外から獲物を窺うのでは
なかったか。ちょうど、
リビングから向こうの部屋の様子を
見ている自分のように。
彼は馴れた手付きで卵を割ると、
それを一人暮らしには不釣り合いな
三口コンロに置かれたフライパンの
中へと落とす。
油を多めに引いて揚げ焼きのように
作る、というのは以前好きな
料理家が紹介していたレシピだが、
彼の定番になりつつあった。
窓際のスペースは腰掛けなのか、
それともサイドテーブルなのか。
彼はリビングでは腰掛けとして、
洋室ではベッド際のサイドテーブル
として扱うことで落ち着いた。
ふと窓の外へ目をやれば、
彼がリビングから洋室へ移動した
ときに履いたスリッパに、
ぽつぽつと雨が降ってきている。
プロの泥棒ならば、わざわざ室内に
入るときにスリッパなんて履かず、
また脱がないだろう。
どこからどこへ移動したのかを
悟らせるのは泥棒としては落第点、
そんな気がしていた。
ましてやこんな雨予報の日に、
スリッパをわざわざ脱ぐ泥棒なんて
世の中にはいないだろう。
それにしても、と彼は黄身を崩して
パンに塗りつけながら思う。
幼い頃読んだ絵本の中で、泥棒が
立ち往生していたのは、
ベランダとバルコニー、どちらの
空間だったのだろうか。
ベランダだったのではないか?と
考える彼の記憶を浸すように、
雨音がどんどん大きくなっている。
ベランダ、後者ならばバルコニー、
そう分類されることを知った。
つまり我が家はバルコニーなのだ。
洋室からリビングへ、中のドアを
使わずに屋根の無い外部を通れば、
自分の家なのになにか悪いことを
しているという錯覚がある。
昔、絵本や教科書で見たような
泥棒というのは、こういうふうに
外から侵入して来たのだった。
こちらのリビングにはテーブルと
椅子、簡素な棚を置いたが、
向こうの洋室にはベッドのみ。
寝るときか、先程のように
ぼんやりする時以外には、
向こうの洋室に用がなかった。
バルコニーからの連想ゲームで
言うのなら、泥棒は、そういえば
窓の外から獲物を窺うのでは
なかったか。ちょうど、
リビングから向こうの部屋の様子を
見ている自分のように。
彼は馴れた手付きで卵を割ると、
それを一人暮らしには不釣り合いな
三口コンロに置かれたフライパンの
中へと落とす。
油を多めに引いて揚げ焼きのように
作る、というのは以前好きな
料理家が紹介していたレシピだが、
彼の定番になりつつあった。
窓際のスペースは腰掛けなのか、
それともサイドテーブルなのか。
彼はリビングでは腰掛けとして、
洋室ではベッド際のサイドテーブル
として扱うことで落ち着いた。
ふと窓の外へ目をやれば、
彼がリビングから洋室へ移動した
ときに履いたスリッパに、
ぽつぽつと雨が降ってきている。
プロの泥棒ならば、わざわざ室内に
入るときにスリッパなんて履かず、
また脱がないだろう。
どこからどこへ移動したのかを
悟らせるのは泥棒としては落第点、
そんな気がしていた。
ましてやこんな雨予報の日に、
スリッパをわざわざ脱ぐ泥棒なんて
世の中にはいないだろう。
それにしても、と彼は黄身を崩して
パンに塗りつけながら思う。
幼い頃読んだ絵本の中で、泥棒が
立ち往生していたのは、
ベランダとバルコニー、どちらの
空間だったのだろうか。
ベランダだったのではないか?と
考える彼の記憶を浸すように、
雨音がどんどん大きくなっている。
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