LDKのLではないし、LivingのL…
というわけでもなさそうだった。

間取り図に、割と大きめに鎮座する
「L」の文字は、真面目に部屋を
探している私を大いに困惑させた。
不動産屋の男が、ごく普通に
この間取り図を見せてきたので、
私も「何事もない」という風に
間取り図を眺めるよう努めていた。

玄関を入ったところに生活面が
固まっているのに好感を持った。
私のような無精者は、
酒を飲んだ帰りなどは決まって、
朝シャワーに入るなどと言い残し、
ベッドまで辿りつかず床に倒れて
そのまま朝を迎えるのだ。

だがこの部屋であれば、
玄関を入って左手側に水回り。
手を洗うついでにシャワーも浴びて
さっぱりした気持ちで二日酔いを
迎えることだろう。

奥の洋室がベッドルームか。
そうすると、Lの字を見るのは
リビングに用事がある時だけ。
食事時や日中に見ることになる。

黒く塗りつぶされているのだから、
柱とか、そういうものに違いないが
なぜLの字なのだろう？
やはり、LivingのLだから？
Lightではないだろう。

くだらないことを考えていると、
不動産屋の男がふっと、
笑ったように見えた。そうか、
少し意味合いはずれてしまうが
笑顔を表す単語、「Laugh」の
「L」でもあるんだな。

今度は私がふっ、と笑う番だった。
このLがリビングに鎮座することで、
どんなLaughが生活に待っている？
そう考えるだけで、年甲斐もなく
わくわくする私がいるのだった。