昔から、電車に揺られて眺める、
線路の高架沿いのビルの窓辺の、
中の様子が気になってました。

それは会社の仕事場だったり、
倉庫だったりサロンだったり、
バレエ教室だったりするんですが、
別世界みたいな感じで、
そちら側へ行くのに憧れてました。

という、
前置きを書いちゃいましたが、
ようするにこの距離感で眺めたい、
と思っていたんですよね…。

まさに反対側の景色だ。
僕が見ていたのと逆だ。

こちら側に来たかったんだ。

しかも、ここに住めるだなんて！
これは（個人的に）夢の物件だ。

築50年以上の古いビルの最上階で
暮しているなんて、すごいことだ。

ああ、ほんとうにこんな感じ。
こんなビルの窓をいつも見ていた。
通学と通勤で毎日、通り過ぎた。

その内側に入っていくこと、
それ自体がたいそうなロマンだ。
ああ、なんていい入り口の雰囲気。

エレベーターなしで５階まで、
階段でポケットの鍵を鳴らして
眺めのいい自分の城へ帰る日々。

想像しただけで春が来たよ。
この事務所なのか、住居なのか、
曖昧な感じもいい。あれ、これって
浴槽ないのか…。トイレは…室内。

なるほど、なるほど。
ここでシャワーユニットか。
おもしろい、おもしろいよ。

それにやっぱり、このトイレ、
昔は会社の事務所のトイレっぽい。
なんていうか、掃除当番とか、
貼ってありそうな感じが好き。

オープンになったキッチンが、
ここでの自由な生活を連想させる。

一人で珈琲をいれてもいいし、
たまにパーティーなんてしたら
様になっちゃうんだろうな…。

にぎやかな夜。

飴色の床を友人たちが動き回る。
ふと窓の外の線路を見下ろすと、
混雑した車内にあの日の自分が…。

みたいなやつだ。やっぱ夢だ。