真っ白、ぽつん。ここで料理をする横顔がきっと絵になる。
頭の中では「情熱大陸」みたいにインタビューされる自分が浮かぶ。

「料理を趣味とする者の朝は早い。」なんてナレーションを自分で挿入してみる。
明るくなった窓の側で、今日は朝からことこと料理を煮込みたい。

煮込んでいる間は部屋の隅のテーブルでラジオを聞いている。

「なぜここに決めたのですか？」と取材のカメラが横顔を覗き込む。
そうですね、明るい所で、料理のにおいを感じながら本を読んだり、作業をしたりしたくて。
時折つっかえながら、インタビューに答える私を想像する。

いくつかインテリアの本を読んだり、インターネットを見たりして、私は木目のあたたかみも好きだけど、それ以上に白いインテリアが好きなのだと思った。
それで、少しゆったり暮らせるところがあればいいな、と探したのがこの部屋だった。

玄関を入ってすぐの収納には、料理の書籍を入れようと思っていた。下駄箱に収まりきらない靴がここにも侵食してきそうだけど。

いつか、本で「寝室はリラックスの場所なので、あまり色は使わないようにしましょう」と読んだのがやたら記憶に残っていた。
だからこういう風に、真っ白なところがいいな、と思っていたら理想に近いものがあった。

そのうえ、ウォークインクローゼットもついている。

部屋は白が好きだけど、私は濃紺とか黒とか、落ち着いた色の服が好きだ。
ピンク色は見当たらないクローゼット。

トイレも白一色で揃えて欲しかったな。

洗面台は、脱衣所にあるものじゃなくて独立している。ここも真っ白、気持ちがいい。

お風呂も、トイレと同じく白一色ではなくて、濃い色がアクセントに使われていた。
あんまり白ばかりだと、寒々しいからかな、と思う。

でも私はやっぱりこのキッチンの白くて、ぽつん、とした感じが好きだなあ。
すこし寂しく見えるのかもしれないけど。

真っ白のキッチンには真っ黒のごとくは似合わないな、って誰かが判断したんでしょう。
IH二口がこんなに似合う、って思ったのは初めて。

広めのバルコニーには、これから真っ白なふきんが並ぶことになる。
バスタオルも、ぞうきんも、この家にある限りは真っ白で揃えよう。

「眺望も白いんですね」と取材班が苦笑いする声が聞こえるような気がする。

エプロンをつけっぱなしにして、すぐそこのマルエツまで行く。あのキッチンを出ても絵になっている、気がする。