これ。この間取りで探していました。
もうこのままでいいです。

どうして分かったんですか？
今のわたしたちの二人暮らしにぴったり。

けれども、予算オーバーなんですよね。
11万5千円くらいで探していたのですが。

いや、率直に言うと10万円以内がいいです。
人間、どうしても少し上を見てしまいます。

ですから、11万円でも背伸びしているんですが、こうもしっくりとくる間取り図を見せられると「わたしが住まなくては」という気分になりますね。ああ、どうしよう。

場所がこれまた、京王線の千歳烏山。
ちょうど、わたしたちが探していた駅なんです。知ったこっちゃないと思いますが、本当にそうなんです。尚のこと驚きました。

千歳烏山で、一人の時間も持ちやすいメゾネットを探していたんです。２口以上のガスコンロと、トイレと分けられた洗面台が彼女の希望といえば希望だったんですが、どうやらクリアしているようです。

一階は丸ごとあげるから好きに使っていい、と彼女なら言うと思いますが、リビングの近くにもう一部屋、寝室と個室をかねた空間があるといいなあ、と思っていました。

その位置関係が、まさにこれ。

これでまちがいないです。
どうして分かったんだろう。

いや、ちょっと待ってください。
ロフトはとくにイメージしていなかったな。

でも、こうして見せられるとロフトも必要としていたような気がしてきました。想像を超えてわたしの求めている物を満たしてくれるというのか、この物件は。

待てよ。５階と６階……？

５階と６階のメゾネットだというのか。

超えてきますね、この物件は。
当たり前のようにエレベーターもあるようです。上階にも下階にもバルコニーがある、というのが熱いじゃないですか。

ああ、予算オーバーだけど、わたしが住みたい、わたしたちが住みたい。

なぜ予算オーバーするんだ。そこも超えてきてどうするんだ。そこは抑えて欲しかった。

わたしはもう、間取り図で十分に満足しましたが、写真を見たいという方もいらっしゃると思いますから、何枚か見てみましょう。

ああ、そういうことです。
静けさと温もり。ぴったりきています。

そうです、そうです、これでいい。
北側が傾斜しているのは知らなかったな。

ああ、いいな。すごくイメージできる。
これだけ余裕のあるキッチンなら思うように料理してもらえるだろう。今まで不便をかけたからな。すっかり気分が替わるだろう。

うんうん、……うん？ あれはなんだ。

あれがロフトかな？

なにこれ、聞いてないよ。

ロフトというには低いし、座敷というには高いし、何するの、ここ。ねえねえ。

ねえちょっと、ここで何すればいいの。ここからお上りください、風なステップが付いてるけど、こんなのいるかなあ？

どう思う？

でもちょっとかわいいか。

なるほど、そういうくせもあったか。

洗面台やトイレは想像していた通りに。

手洗いもついていて、淡い木目が美しい。

寝室にする部屋の収納も、ぴったりときました。均整をとりながらここを持ち物で充していく様が、そのままわたしたちの毎日の無事を表すことでしょう。

立地と間取りと空気感は申し分なくすばらしいけれど、予算をけっこうオーバーしちゃっていることと、ふしぎな座禅スポットが居間にくっついていること。

この二つをどう考えるか、ですね。さっそく今夜あたり相談してみようかな。物件のこととなると真剣ですからね、あの人は。

LINEで送っておこうかな。

あんまり急ぐことも、ないけどな。

悩んでいるようでいて、これってけっこう、楽しいんだと思います。そうでしょう？