階段に落ちてくる光がきれい。それだけで部屋から出なくていいやって思う。
しかも二人で暮らすなら、そういう怠惰でロマンチックな理由で、部屋でのんびりしてみたい。

なんで光が落ちてくるのかと言えば「高いところに窓があるから」って君は言うけど、そんな、身も蓋もない。でも、そうなんだよね。
高い天井を見上げてみれば、新宿御苑の木々がこちらを覗いている。
そうだな、角の位置にソファなんて置いて、二人でなんだかんだと話しているうちに、
うとうと眠っちゃったりして。

そういうのもいいよね。
起きたら夕方で、すっかり陽が落ちて辺りは暗いけど。

先にお風呂にしようか。
洗面台を見てぎょっとする。頬に布のあとがついている、変な体勢で眠っちゃったから。
白〜ベージュの落ち着いたトーンはなんだか安心感がある。

キッチンで何か軽食でも作ろうか。
お風呂に入っている間に作られていたら嬉しいもの、ってなんだろう。

階段の下は収納になってるんだよ。
昔、ピアノや学習机の下によく隠れたでしょう。狭いところが好きとか言って。
今はしまってある荷物を見るために階段の下に潜り込む。

二階の寝室にもクローゼットがあるから、二人で分け合って使おう。
おそろいの部屋着とかもいいね。
二人で寝ぼけ眼で取り出すもんだから、たまにあべこべになってる。

ここの天窓、気付いた？うん、気付いたよ。
窓の下にベッドを置いて、眩しがって起きるのもいいかもね。

そこのドアはバルコニーに繋がってる。
たまに夜風に当たりたい時があるじゃない。春のぬるい空気とか。
冬の、きーんと冷たい空気とか。そういうのに、寝る前に触れるのもいいかもね。

御苑の木が見えるけど、ここは通り道にも木が植わっている。
木が成長すると、ここで過ごした時間も長くなってきたんだなって実感できる。
…そんな未来を想ってみる。

「ここで暮らしてみてよかったよね」なんて、笑い合う二人が見えるよ。
二人で生活して、人生を過ごすことのイメージがきちんとできたから。
次に住む部屋も、光が多くて、自然が周りにある場所だといいな。できれば、駅から近くてさ。