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DIYで「ともに作る」を楽しんだら、ずっとあった孤独や不安がぜんぶ溶けた。

リノベーションの素晴らしさといえば、古い物件を大切に住み継ぐ、自分好みにすることで愛着が湧く……などがありますが、もうひとつ。〈一緒に手を動かすことで、人と人が仲良くなる〉ということがあります。

今回は「DIYがっこう」や「みんなでつくるワークショップ」などの活動で知られる桑原憂貴さんに、「ともに作る」ことがもたらす効用と奇跡について伺いました。


桑原憂貴(くわばら ゆうき)

1984年群馬生まれ。 東日本大震災をきっかけに復興支援で関わりのあった岩手県陸前高田市で起業。家具から空間まで自らつくれる人をふやし、日本の森をつなげる「KUMIKI PROJECT」を全国に展開している。

KUMIKI PROJECT

被災地に住みながら

陸前高田市今泉地区の震災後の様子。起業前に勤めていた会社で、ソーシャルマーケティングという、簡単にいうと売上の一部を社会のために寄付しませんか、と企画する仕事をしていたんです。

震災が起きてから、顧客の企業が、東北にお金を使おう、という流れになりました。ちゃんと被災地の役に立つためには、ぼくら自身も東北に住んでいなくちゃダメだよね、ということで、陸前高田に会社を作り、そこへ出向したんです。

ここでの体験は、いまだに上手くしゃべれないんです。会議で話していたら、津波で大切な人を失ってしまった人とかが普通にいるわけです。どこかのタイミングで、そういう気持ちが出てくる場面があるんですよ。

全然違うことで住人の皆さんがぶつかっているところに、実は気持ちのストレスが出ちゃってたり。そういうものを、現場に入っているぼくら自身もたくさん受けるんです。 

その当時やっていた、地元の木材を使った事業化調査もなかなか簡単にはいかなくて。コンサルタントとして調査したんですが、事業はなかなか難しい、みたいな報告書になっちゃって。

だれかを本当に幸せにできるんだろうか、って悩みました。被災された方に、苦しんでいるなかで協力してもらっても、先が見えない。一年もかけて……それでも、事業化の道が見出せなかった。

行き着いたのは「人」

林業の方々を見ていて、何かできないかな、というのは思っていたんです。先のことは考えられませんでした。自分自身ずっと被災地にいるのか、どこで生きていくのか、全然分からない。地元の人とは壁があるし、理路整然と考えられませんでした。

ただ、その時に行き着いたのは「結局、人じゃないか」ということなんです。いい木材があって、機械があって、製材能力があって、とかじゃないと思ったんです。

そうじゃなくて、熱量を持って動く人がそこにいること。どんなにきれいなビジネスプランが出来たとしても、自分の人生を賭けて挑戦しよう、という人が立たないかぎり、始まらないじゃないですか。それで、陸前高田で起業したんです。まだ会社を辞めていないのに、誕生日に登記しました。

事業計画とか、ないんです。ビジネスとかじゃないんです。嘘が言えないんです。地元の人たちも、お金が流れてるのが分かるじゃないですか。ただただ時間を使って過ごしてきて、「どうなったの?」とか言われる。裏切れないんです。

とにかく林業で起業しようと。自分なりの関わり方をするために、会社を作ろう、と思ったんです。

優しくされたい

やっぱり、優しくされたかったんじゃないですか。自分が人に優しくされたい、愛情が欲しい、というのがすごく強いんです。

ぼくがソーシャルビジネスに関わってきたのは、実はそれが一番人に認めてもらえるからなんじゃないか、と最近気がついたんです。

大きなこと言ってる割には、「あなたにとっての社会問題ってなんですか?」という問いにずっと答えられなくて。

貧困問題といっても身に沁みてはいないし。被災地へ行って、仲良くなった人から「日本酒飲んでけ」と言われても、本当に飲んで行っていいのか分からない。

会社の飲み会でも、もちろん楽しくやっているんですけど、そのあいだ、こういう接し方でいいのか、確信が持てない。孤独感や不安感が、ずっとあったと思うんです。

陸前高田にいても、現地の人から「あなたはいずれいなくなる人でしょ」と思って扱われるわけじゃないですか。「この寂しい関係のままでいいんだろうか?」って。

東北でもそうだったし、これまでも、誰かとすごく仲良くなっても、その人がある日いなくなるんだったら、いやじゃないですか。

そういうものが、みんなで一緒に集会所を作った時、全部溶けたんです。みんなで作ったということが、その人たちと関わる理由になった。「一緒に作ったよね?」というのが、人とつながる理由になったんです。一緒に作ることが、ぼくにとって人とつながることだった、と気が付いて、すごく楽になった。

集会所のこと

地元の人たちが、自分たちの街をどう作りたいか、と話し合いをする中で、「もともとあった集会所をもう一度取り戻せたら」という話になったんです。

一方で、杉は傷つきやすいから普通の家具だと難しいけれど、レゴブロックのように組み立てたらいいんじゃないか、という思いつきがありました。ちょうどその頃に、杉のブロックを作っているおじいちゃんに出会って。

この二つを合わせたのが、集会所のプロジェクトなんです。ぼく自身、本当に素人で、初めてホームセンターにつなぎを買いに行くところから始めました。

基礎が必要だってことも知らなかったんですよ。大工さんに「基礎はどうなってるんだ」って言われて。「おまえじゃ話にならない」って、建設会社さんに連れて行かれて。

そうしたら、社長さんが他の現場を止めてスタッフを送り込んでくれたんですよ。当時は「おまえは邪魔しに来たのか支援に来たのか分からない」と言われていて。長谷川建設の長谷川順一さんという方なんですが、いつも支えてもらってきました。

気仙大工って、七十代の方が三人いらっしゃったんですけど、もともと棟梁として活躍してきた人たちだから、ちょっと荒っぽいんですよ。昔ながらのやり方で、水平を取るのも、今だったらレーザーなのに目視なんです。手で「もっと上」とか言われるんですけど、そのサインが分からないんです。

今思うと面白いけど、超必死でした。専門用語で言われるから、片手にiPhone持って調べながらやるんですけど、だんだんぼくが調べているのが分かると、気仙語で話しだすんですよ。茶目っ気のある人たちで。

いい出会いだったですよね。一日目に壁が立ち上がっていった時の、その光景はずっと忘れられないですね。みんなの目のきらきらしたところ。ああ、建物って素人でも作れるんだねって。

二日目は時間が掛かっちゃって、屋根と床を同時に作ろうとしたんですよ。そうしたら棟梁が怒っちゃって。「上で作業してる時に何か落ちて人が怪我したらどうするんだ!」って、棟梁の一人が、怒りすぎて帰っちゃったんですよね。

その夜、一升瓶を持って仮設住宅へ行って。「すみませんでした!」って。初めてそういうやり取りをして。超怖いですよ。でも明日もあるし、行こう、と思ったんですよね。

正直、ぼくの関わり方が良かったのかどうかは分からないんです。お金集めはこちらでやったし、集会所を引き渡して終わってしまったので。

ただ、あの瞬間は、本当に「いい仕事をしたな」って、気持ち良かったんですよね。ぼく自身が、地元の人たちに救われた感覚がすごくあったんです。今まで生きてきて、なんか人とつながれていない感覚、そういうものが満たされた。そんな体験は、初めてで。

これからのこと

今は、作れる人をふやすDIYの学校と、オフィスや家でみんなで作るリノベーションのプロデュース、この二つを事業の軸にしよう、と思っているんです。

木を使って商品を作ることより、一緒に作ることや、作る人をふやすことにぼくらの価値がある、ということに気づいたんです。

たとえば、ぼくらの「DIYがっこう」で学んだ主婦の方が、空き時間にちょっとお金をもらいながら、個人宅やオフィスのリノベーションを支援したり。

そうやって両輪をぐるぐる回すと、作れる人が日本中にふえて、そこに木材をつないでいけばいいんじゃないかな、と考えています。

みんなで作ることの可能性や、人がつながっていく価値を、木材を使って全国に広げていくのが、今のぼくらのミッションです。

湘南・二宮町での空き家のセルフリノベーション。

被災地で目にしたこと、起きたことは、自分でも消化できていないし、恩返しもできていないんです。でも、もしできるとすれば、そこから生まれた会社が、新しい価値観を広めていくことじゃないかな、と思っています。


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