童話に出てくる魔法使いが住んでそうな、 埋もれるほどの緑の中に建つ家。 こんなおうちに、子どもの頃から 憧れていました。

敷地への入口は、水路の上を 渡って入るそうです。 すごいなあ、ほんとに中から 魔法使いがあらわれそうな 魅力的な雰囲気。

敷地はなんと、約124坪。 建物の手前にある「広場」の文字にも 驚きます。

わ、中へ進むと建物が見えないほど 緑がもさもさと茂っていました。 赤い実がかわいらしい、南天の樹々の 隙間を通って玄関へ。

30年ほど前に、自然養蜂家のオーナーが 大工さんと共に作業し作り上げたという 平屋の2DK。 セルフビルドらしい、ラフな仕上がりも 魅力的な一軒家です。

西側の和室は畳が取り払われて 板間になっています。 漆喰の壁と相性がよく、あたたかみの あるおもむきです。

天井もとりはらわれ、 表しになっていました。 脚立を使えば屋根裏に 上がれるとのこと。 季節の物を収納するのに 役立ちそうです。 また、床板の一部が外せるように なっており、そこで火を焚くと煙が 全体にまわり、燻し効果で虫よけに なるのだとか。 他にも台所では、床下の土を掘り、 保冷庫として野菜などの保管に 使っていたとのこと。 オーナーさんの、自然の理を利用した 生活の知恵に、驚き 頭が下がる思いです。

木製の土台にステンレスの天板で 仕上げられたキッチンは、手作り感と あたたかみがありますね。 ガス台は動かせるようになっている そうですよ。 使いやすいようにDIYできる余白が 残っているのがいいですね。 庭に面した廊下は、縁側の役目も 果たしてくれています。

キッチンの向かいは、ほっこり6帖の和室。 写真にあるような座卓がとてもお似合い。 冬は炬燵にしてぬくぬくと過ごすのも いいなあ。

水回りは手を入れたほうが、 快適に暮らせそうです。 毎日使うリラックス空間を お好みの配色や設備に 変身させるのは楽しいに違いない。

庭に面した南側には濡れ縁が広がります。 補修が必要な具合ですが、 完成した濡れ縁で、庭を眺めながら 飲むお茶は格別なものになりそう。 まわりが樹々に覆われているから 人の目も気にならないだろうし。

広い敷地には豊かな緑がいっぱい。 まだまだ植えられる余地もあるので ガーデナーの方にはたまらないはず。 畑やビオトープも作れそうです。

建物と前面道路の間の「広場」は 増改築や家庭菜園など、アイディア次第 で、より豊かな暮らしが花開きそう。

鎌倉市、江ノ電・極楽寺駅から 徒歩9分ほどのところにあり、まわりは 農地がちらほら残る、静かな地域。 鎌倉駅と海水浴場のある稲村ヶ崎の 中間地点にあたるので、 セカンドハウスや民泊としても魅力的。

いや、でも、やっぱり ずーっと住んでいたいなあ。 お庭にはハーブをたくさん植えて 自家製の果実酒やドクダミ茶なんかを どっさりつくる丁寧な暮らし。 たまに友達を呼んで、ポットラック パーティをしたりして。

極楽寺近くの極楽な庭のある こんな平屋で、日々の暮らしを 大いに楽しめば それはもう、現代の魔法使いなんじゃ ないかなって思うんです。

文・葱山紫蘇子 大阪在住で子供を4人産んで育ててる独り身。元劇団維新派役者竹山らいち、元ミニシアター従業員、元介護職。建物と書き出し小説と漫画と毛布のヘリが大好き。 @sisokoex