宿泊業でもはじめようかな。 そんな簡単にできることじゃないと もちろんわかっているのですが、 思わず夢見てしまうほど 魅力の詰まった建物なんです。

最寄駅から徒歩13分、 スーパーマーケットや 飲食店が並ぶ街中にあるこちら。

昭和48年築の堅固なRC造。 味のあるレトロビルです。

4階建てに地下1階、 お部屋は全部で13室。 加えて大きな浴室に立派なロビーとくれば 開業したくもなるじゃあありませんか。

中に入ると、正面には 広々としたロビー兼談話室。 大きな掃き出し窓からは、噴水のある お庭にも出られるのだとか。 レトロな壁の模様にゴージャスな ソファーで、のっけから 昭和のおもむきを堪能できます。

お隣は食堂になっています。 カウンターと室内窓の向こうが キッチン。

すみません、キッチンなんて かわいらしいものじゃ ありませんでした。 業務用の設備が入った大きな厨房は まるで学校の給食センターのよう。 宿泊業をするなら、初期投資がだいぶ 助かりそうです。シェアハウスなどに するなら、共有のキッチンとして 開放してもいいのかもしれません。

他の階もじっくり見ていきましょう。 たびたび補修されたのか、 廊下の壁や床などは あまりくたびれていない印象ですね。

お部屋には有名観光地の地名が それぞれにつけられていて、 温泉旅館を思わせます。 プレートの丸ゴシックがとてもいい！

「十和田」は、畳敷きで収納の多い 旅館風のお部屋です。

襖の向こうからは柔らかな陽の光が 降りそそぎ、そして

旅館と言えばやっぱりこれ！ みんな大好き、広縁がありました。 ここには籐のイスとガラス天板の 小ぶりのテーブルを置きましょうね。 約束ですよ。

窓の外には熱海の街と緑が広がります。 やや高台にあるらしく、 2階でも眺望・陽当たり共に良好です。

次は「佐渡」のお部屋。

手前にはフローリング、奥に和室が 配置された、二間になります。

地窓から差し込む光に 風情を感じますねえ。

こちらのお部屋からも 緑がたくさん目に入ります。 座卓を囲んでお茶とお菓子を ゆっくりいただきたいものです。

お次は「能登」。

床はタイルカーペット。 シンプルなワンルームタイプです。

ヨーロピアン調の壁紙が 良いアクセントになっています。

コンパクトなお部屋のようですが、 大きな4連窓のおかげで 開放感がありますね。

お隣には「能登」と左右対称の 間取りになる「雲仙」。

スクエア型の照明がモダンです。

洗面所とトイレは「十和田」「佐渡」 「能登」「雲仙」いずれも 同じ造りになっています。

床の模様が昭和レトロ感いっぱいの かわゆさ。

オレンジ色の洗面台との組み合わせにも キュンとします。

3階は一番特徴のあるお部屋を ご紹介しましょう。 長い廊下を進み、

その先にあるのが「高千穂」。

続き間の広々としたお部屋です。 木がふんだんに使われた、 あたたかみのある居心地のいい空間。

手前とはうってかわり、奥のお部屋は 床と天井が木材で、壁は白色。 天井と壁の組み合わせが 二室で互い違いになっていて 遊び心を感じます。

こちらの窓からの眺めも 気持ちがいいですね。

床の間や地窓などは 伝統的な和の設えですが、 フローリングとの相性も 意外といいものなんですね。 これなら北欧系やミッドセンチュリー の家具も似合いそうな気がする。

こちらの洗面・トイレは出入り口側の お部屋に設置されています。 こちらもウッディな雰囲気です。

トイレの便座と蓋も木製なんですね。

お部屋の持つ異なる個性に、作られた 当時の工夫やこだわりを感じられて、 そういうところが本当に愛しい。

浴場は地下にあります。 もちろん、温泉が利用できますよ。

海と温泉の街、熱海をイメージした ような、濃淡のある青いタイルが 派手過ぎず地味過ぎず、 たまらなく美しいですね。 窓の向こうの岩壁もすごい迫力。

お部屋によってはリフォームが必要に なりそうとのことですが、 築50年の建物にしては 全体的にまだまだ現役な印象です。

街中で駅から徒歩圏内の 温泉施設というのも良い立地。 ちなみに相模湾を臨む屋上から、 海上花火大会の花火も 見られるそうですよ。

都心の真ん中で家を買うことを思うと 手の届く価格でしょうか。 宿泊業はもちろん、シェアハウスなど にも活用できそうな一棟。 かなりの覚悟が必要と わかってはいるのですが、 もし、自分で事業を立ち上げるなら あーしてこーしてと夢想が止まらなくなる、 魅力のつまった建物でした。

文・葱山紫蘇子 劇団維新派→色々→介護業を経験。漫画と建物と書き出し小説が好きな4人の子を持つ大阪のシングルマザー。 @sisokoex