もともとの建物の良いところを 活かしたリノベーションというのは、 やはり実際に住んでみても 気持ちの良いものになると思います。 今回は、当時の設計の意図を紐解いた 丁寧なリノベーションにより、 ダイニングが中心となった お部屋のご紹介です。

間取りは3LDK。 お部屋のほぼ真ん中に計画された ダイニングキッチンは、 各部屋への動線も集まる、 文字通りこのお部屋の中心となる 空間です。

玄関を開けた正面には ダイニングにつながる 廊下がのびています。 玄関からはひと続きの空間に なっているので、 かなり開放感がありますね。 飾り棚のある腰壁や 雁行した空間構成のおかげで、 全てが丸見えにはならず、 かえって奥行きが感じられます。

南側の大通りから少し距離を とりながらも、東側に向かって 大きな窓が設けられた この家で最も気持ちのよい場所が ダイニングスペースとなっています。 床材も鉢植えなどの置きやすい フロアタイルから、 足触りの良い杉板に切り替わり、 ゆるやかに領域が分けられています。

こちらのダイニング、もともとの プランでは客間だったそうです。 かつて、お客様をもてなす場所として 住まいの中心に据えられていた空間が、 家族が集まる場所でありながら、 お客様もおもてなしできる ダイニングスペースとして 生まれ変わりました。

そのダイニングを挟むように個室が 2つ並びます。 カーテンを設置すれば 子ども部屋やワークスペースに、 建具を開け放てば ダイニングの延長に。 ライフステージの変化に合わせて こもったり、つながったりと 様々な使い方ができる 可変性の高い空間です。

2つの個室を仕切る壁は、 壁というよりも家具のような 軽やかさを持っています。 四角い形として認識できるように 梁の下の部分で納まりを切り替えたり、 巾木やコンセントといった 「壁らしさ」を生むような要素を 徹底的に排除していたりという 細かなデザインの 積み重ねがなされています。

この壁らしくない壁の存在が こもった時でもつながった時でも 違和感なく使える空間を支え、 ダイニングをより自由に使える空間に しているのだと思います。

ダイニングからゆるやかに つながるリビングルーム。 ダイニングに動線が集まった分、 リビングを横切るような動線がなく、 たまりのある落ち着いた空間に なっています。

リビングの隣のお部屋の8.2帖の洋室は 南向きの明るい空間。 床材には玄関などと 同じフロアタイルが用いられ、 色味を抑えたお部屋になっているので 寝室にぴったりですね。

寝室のお隣には4帖ほどもある 大容量のウォークインクローゼットが 設けられておりますので 収納面も安心です。

建物が建てられた当初のプランを 丁寧に読み解き、 一番良い場所に設けられていた 客間を、家族もお客さんも集まる ダイニングとしてお部屋の中心に 据えなおした今回の物件。 建物自体のポテンシャルを 最大限に活かした 魅力的なお部屋になりましたね。

文・佐藤シュン 浜松で設計事務所をやりながら、黒猫と暮らしています。