あまり手を加えられることなく
ほぼ原型を留めたままの京町家。
年を経て飴色になった建具たちを照らす
磨りガラス越しの柔らかい光。
セピア色の部屋の風景は
まるで時間が止まったかのよう。

玄関から通り庭と続く土間に面して
和室が三室並び、
京町家ならではの趣が感じられます。

おくどさんが並んでいたと思われる土間、
水場は全て取っ払われているので
ここからどんな台所を造るか
想像するのがまた楽しみでもあります。
ステンレスの無骨なものも合いそうだし、
ナチュラル素材で優しい表情にしてみたり、
自分好みのタイルで遊ぶのも良いですね。

暖かな色のライトを灯したら
グッと素敵な空間になりそうです。

時間の経過と共に少しくすんだ床は
根気よく磨き上げるか、はたまた
新しい板に張り替えるか。

温かみのある古い建具や柔らかいガラスは
なるべくそのままの姿でいてほしい。
壊してしまったら、
きっともう出会えないものたちだから。
磨りガラスを通したまろやかな光、
開け閉めの時、シャラシャラ鳴る音、
たまらなく良いんですよね。

また、このおうちの特徴は
一階の店の間（ミセノマ）、座敷、
二階の奥の間、それぞれに
床の間があるということ。
合計三つも床の間があるというのは
この規模の京町家では珍しいそうです。
趣も形式も違う床の間、どう使おうかと
想像を膨らませつつ、順に見てみましょう。

表の通りに面した店の間は
訪れた人が最初に目にする所でもあります。
ごくシンプルながら、
味のある骨董品や、作家さんの花瓶、
季節ごとの草花などで
パッと彩りを添えたいですね。

一階奥の座敷、縁側に面した床の間は
簡素な吊り床。
横にある古い戸棚が既に非常に素晴らしいのでね…
調和し、引き立て合うような、
インテリアを考えたいところです。
和ではなく、北欧、ヨーロッパの
アンティークな置き物なんかも
しっくりきそうな雰囲気です。

二階へと上がりまして

奥の間の床の間。
こちらは違い棚のある床脇、丸太の床柱、
平書院など備えた格式高い形。
平書院の明かり障子から差す控えめな光が
床の間に陰影を生み出し、
和風ならではの侘び寂びが感じられます。
鮮やかなお花など大きく活けたら
ハッとするような空間になりそう。

表通りに面した隣の六畳間。
大きく取られた窓から臨むのは
閑静でのどかな街並み。

目の前の通りは幅員が7mちょっとあり、
低層住居専用地域のお陰で、
空を広く感じ、陽当たりも風通しも抜群。

古い家たちが並ぶのも
どこか穏やかな気持ちにさせてくれます。
窓辺にもたれて黄昏れる時間も
至福の時でしょう…。

窓や扉はアルミサッシになっているのですが
玄関だけでも、木製扉にできたら…！
更に良い風情になりそうですね。

地下鉄烏丸線の北大路駅から
歩いて10分ちょっと。
京都駅へは乗り換えなしで行くことができ、
お出かけや買い物にも便利です。

徒歩圏内にはスーパー、コンビニ、
ドラッグストア、銀行や郵便局…と、
充実しており、日常生活には困りません。
ちょっと足を伸ばせば、賀茂川や
最古の公立植物園、京都府立植物園もあり、
豊かな自然に触れることができます。
利便性と穏やかな生活を
両方手に入れられる古い京町家。

ここに残る古さは、
人を寄せ付けないものではなく
優しく迎え入れてくれそうな、

どんなものでも受け入れてくれそうな
柔らかさ、懐の深さを感じます。
積み重ねられた時間が醸し出す気配。

この趣と味わいをなるべく壊すことなく
今の暮らしに合うように
所々リノベーションしつつ、
引き継いでいけたら素敵ですよね。