私の頭の中に住む イマジナリー親方がつぶやいた。 「素材がよければちょっとお化粧するだけで べっぴんになるっていうもんよ」

築55年ほどの木造2階建て。 およそ50年前というと… 1970年代でしょうか。 この時代の戸建ては、奇をてらわない 和風の外観に、内装には洋風の 利便性をうまく取り込んで住みやすく、 丈夫で長持ちするように建てられている。 そんな印象が強いです。

あ、このウッディな感じ、懐かしい！ 転校生のお友達がこんなお家に 住んでました。 どことなく、かもし出される品の良さに 少し緊張した思い出。 おやつには缶カンに入った風月堂の ゴーフルが常備されてそうな雰囲気。 （あくまで私のイメージです）

間取りもまた、かつての 古き良き時代を彷彿とさせる お部屋の数が多いつくり。 広いダイニングキッチンで 食卓を囲んで一家団らん。 ほのぼのとした風景が思い浮かびます。

キッチンは一度リフォームされたのかな。 3くちコンロにきれいな戸棚。 たっぷりの収納力でこのまま使っても 問題なさそう。

格子状のガラス引き戸も、ちょっぴり レトロで、心の底をそっと撫でられたような 懐かしい気持ちになります。 おとなりは和室なんですね。 ちゃぶ台を用意して、 サザエさんスタイルの居間にすると スタンダード。 リノベーションで洋室にして キッチンとひとつづきのLDKに するのも、当世の流行ですね。

しっかりとしたつくりの階段は 年月を経てツヤを増したのか、とても 素敵な色合いです。 見るからに丈夫そうで頼もしくもある。

「パーケットフローリングとは粋だねぇ」 またもや、イマジナリー親方が つぶやいた。 手間のかかる寄木貼りで デコラティブになった様は 職人気質の親方じゃなくても 大いに感じ入ります。 木の壁と相まって、懐かしさと あたたかみ、高級感も満ちている。 天井まである窓のおかげで 明るさも充分。

襖絵が描かれた和室は 凛としたたたずまい。 もし手を加えるなら、壁の色を 濃いネイビーにして モダンなテイストにするなんてのは、 ありですかね、親方？

襖絵も上品でしたが、 他にも細かい所にエレガントな 趣を感じます。 すずらんの花のような可憐なランプに レトロな模様のついた天井。

モールディングの施された 重厚な木の扉も逸品。 このドアノブも、厳かで気品が漂う。

浴室は大理石調のタイル貼り なんですね。 ユニットバスには無いグレード感です。

丁寧に住まわれていたのでしょうか。 味のあるレトロ感に加えて、 愛されお手入れされてきた印象です。 ほんと、イマジナリー親方の言う通り、 ほんの少し手を加えるだけで 見違えるほどモダンになりそう。

場所は世界遺産の姫路城から 車で10分ほどの距離。 最寄りのJR野里駅からは徒歩9分。 近くにはイオンやスーパー銭湯もあり、 のんびり暮らしやすい住宅地。 おまけにこのお手頃価格は驚きです。 あまった予算をリノベーションに回して べっぴんさんに仕立て上げるのは けっこうなお楽しみになりそうですよ。

文・葱山紫蘇子 劇団維新派→色々→介護業を経験。漫画と建物と書き出し小説が好きな4人の子を持つ大阪のシングルマザー。 @sisokoex