どれだけ眺めていても うっとりとしてしまう 芸術品のような格子戸。 繊細な堅子越しの灯りは じゅわりと優しくて この眺めだけで お酒が進んでしまいそう。

昔話の絵本の実写化みたい。 のびのびと茂る木々の向こう、 時代を超えて佇む古民家です。 詳しい記録は残っていないため、 定かではありませんが建物の一部は およそ350年前の部分もあるとか…！ そして、実はここが東京都内というのも なかなかの驚きポイント。

L字の広縁と 大きな土間に囲まれた 古民家ならではの間取りは 小学生が夏休みを過ごす おばあちゃんち、を 具現化したような雰囲気です。

この広縁で走り回って 兄弟げんかをして すいかやトウモロコシを食べて 蚊取り線香と おじいちゃんの煙草の匂いがして 夜はつっかけを履いて 庭に出て花火をしたでしょう？

そんな、この家での子ども時代を 妄想するのも楽しいです。

大人になったこれからを ここで過ごすのならば ちょっぴり違う想像を。 趣のある建具や床は 毎朝…とはいかないまでも 毎週?隔週?ぐらいで きちんと磨き上げたいな。

この雰囲気なら やっぱりベッドよりお布団。 ベッドメイクは苦手でも ここで暮らした途端 お布団の上げ下げは 不思議と苦にならない、なんて マメな暮らしを思い描いてみたり。

掛け軸なんて選んだことはないけれど ピンと来るものに出会えたら 是非とも飾りたい。 お花も季節を感じられるものを 上手に選べるようになりたいな。

キッチンはシステムタイプにリニューアル。 水回りはやっぱり 使いやすいのがありがたいわけで。 小部屋みたいに仕切れて お料理に集中できるスタイル。 目線を上げれば レトロな型板ガラスと すぐそこまでせまった葉っぱたちが 目に入るのがたまらない癒し。

トイレは腰までのタイルに 木枠の窓、アイアン調のペーパーホルダー、 和テイストの照明が 絶妙なバランスで混じり合って これがまた他にはない雰囲気なんです。

洗面台もまた粋なデザインで。 レトロな木部と モダンな洗面ボウルのバランスが 絶妙。

洗面台がある脱衣所とお風呂は 離れにありますよ。 旅館で過ごすような 非日常感を味わえそうで 楽しみなポイント。

そうそう、この土間の広さも やっぱり見逃せない。 ここで七輪でも囲んで 好き勝手に 肴でも、焼き鳥でも、 焼きたいものを焼いて ゆるゆる過ごす夜って 絶対に幸せじゃないですか。

でもね、やっぱり1日の終わりは ここで格子を眺めながら 日本酒をちびちびといただきたいんです。 夏は板張りの床に足を投げ出して 冬は掘りごたつでぬくぬくして。

美しいなー… これを組み上げた職人さんすごいなー… お酒もおいしいなー…なんて ゆるゆると。 凛とした佇まいの古民家に暮らして ぽわんと思いを馳せる夜を過ごすのは きっと、大人の特権だと思います。

文・ほしりょうこ 散歩とビールと読書が好きな、元リフォーム屋さん。10年で8回の引越しを経験。もっぱら東京の西側にいます。 @hs_ryk