京都の夏は暑いと聞くけど この写真からはなぜか涼を感じる。 時の流れから切り離されたような 風情にあふれる平屋建ての町家が お目見えです。

西陣織の口上やお寺も並ぶ 落ち着いた雰囲気の通りに面した 小さな木戸をくぐり、 通路を抜けたところに ひっそりとたたずむこちら。

京都の町家に多くみられる 細長い「うなぎの寝床」ではなく、 ほぼ正方形の土地に広々と 建てられている間取りに、 期待が高まります。

玄関を入ると、丸窓がある 和室がお出迎えします。 アンシンメトリーの意匠が なんとも素敵で、さっそくの 和のおもてなしに見惚れてしまう。

雪見障子のある茶室は二面採光。 障子を介し、じんわりと染みわたる 薄明かりは、谷崎潤一郎が唱えた 「陰翳礼讃」を実感できる。

時代を経て艶やかに色づいた 天井や廊下、建具の美しさ。

一番大きな庭に臨む、板張りの 大広間は、開放感の素晴らしいこと。 ここには床に電源が設置されて あるので、事務所使いもできそうです。

すだれ越しに見る庭が 心に涼しさをもたらしてくれるのは 京町家が持つ魅力のひとつ。

こちらの台所は年代物の土間づくり。 いまとなってはとても貴重な かまどとガスコンロに大変驚きます。 博物館に展示されても おかしくなさそう。

流し台はタイル張りの二槽式。 大切にされてきたのでしょうね。 時代を経てひび割れなどがありますが、 その割にはきれいな状態かと思います。

こちらはよくある町家の細長い台所とは 違い、ゆったりと幅のある、 使い勝手のいい形。 天窓から光が差し込み、ついつい 長居したくなるのだとか。

意外にも、お風呂とトイレは リフォーム済み。 すぐにでも快適に暮らせそう。

タイル張りの壁と床が ほどよくレトロで和みます。

バスが通る大通りからも近く 便利な立地なのに、静かな環境で これだけゆったりとした京町家は なかなか珍しいのではないでしょうか。 住居はもちろん、事務所にも使え、 事前相談が必要ですが、改装なども 可能とのこと。 稀少な広い平屋の京町家をお探しの方、 ぜひお問い合わせしてみてください。

文・葱山紫蘇子 劇団維新派→色々→介護業を経験。漫画と建物と書き出し小説が好きな4人の子を持つ大阪のシングルマザー。 @sisokoex