昔ながらのしっとり和風の門構え。

門扉の格子の奥に見える窓辺、
おやおや…とふと、
足を止めてしまう風情。

からりと開けて足を踏み入れると、
路地のような小さな庭が迎えてくれる。
ささやかなアプローチが、
時間が止まったような、
静かな世界へと誘う。
窓の様子からして、
ちょっぴり特別な予感がする。

間取りを見ると、その窓は洋室のよう。
一昔前のモダン住宅によく見かける、
表に面した部屋が洋室、
という造りのようでいて、
それらとはまた違った趣を感じる。
2階に並ぶ小さな和室…はて？と思ったら
こちらはかつて、学生さん達に
部屋を貸していたこともあるそう。

玄関を開けると、
ひっそりした空気の中にも

じんわり温かな気配、古い木の香り。
なんだか、心が落ち着く。

廊下の先に広がる和室の大空間。

連なる古い窓から柔らかく差し込む陽射し。

プライベートな中庭は
雨の日もいいな、と思わせる雰囲気がある。
庭越しに見える洋室の白い窓辺。

気になる、洋室を見てみて
思わず息を呑む。
そこはかとなく漂う、クラシカルな空気。
廊下からと和室からと、
2つ扉が並んでいるのも面白い。　

この入り口の意匠にじっと見入ってしまう。　

そして、天井に開いた穴。
こんなの初めて見た。
まさか忍者がここから出入り…しないよね。
実用性とか関係ない、
こういう所への美意識や遊び心、
惚れてしまうな。

少しくすんだ白い壁、
年季の入った焦茶の床、
磨りガラスから入る光。

それらから生み出される、特別な空気。

こんな部屋で読書、したいなぁ。

時々ふと、窓の外に目をやって
季節ごとに咲く花たちを眺めたりして。

反対側の窓に目をやると、
風情ある和の縁側風景を楽しめる。

その頃住んでいた学生さん達は
ここをどんな風に使っていたんだろう。
そんなことに思いを馳せるのも、また楽し。

一瞬、古いかな、と感じた台所は
よくよく見たら、ガスコンロを置けば
何の不便もなく使えそう。
あの窓辺と換気扇、タイルも、
懐かしい昭和の風景。

台所横にあるのは洗面所とお風呂。

洗面台はある時期に新しくされた模様。
でも窓からの光は、変わらないまま。

そして、お風呂は、
小さなタイル張りの丸い浴槽に木の蓋、と
昔の姿そのままで残されている。
思わず、お父さんと娘達がワッハッハと騒ぐ
アニメのシーンを思い出してしまうな…。

階段を上がると、

左手には6帖半の和室、

キシキシ音を立てそうな
廊下を進むと

右手には、並ぶ小さな和室のドア4つ。

左手には共同の洗面所。
前にも横にも窓があって嬉しいな。
緑が見える上に、陽射しがたっぷり注いで、
クリーム色のタイルが眩しい。

レトロな型板ガラスのきらきら模様が
活きているのがよくわかる。

朝、顔を合わせて
「おはよう」「おはよう」なんて
やりとりが交わされていたのかな。

4帖の和室たちは、極めてシンプル。

布団を敷いて、あと少しの余白があれば、
生活するには十分なのかもしれない、と思える。

何より、この色合いが
とても落ち着く…。

家族で住むなら平等な個室、
平等な子ども部屋が手に入る！
シェアハウスとしても
はたまたシェアオフィスとして使っても。

京都御所と鴨川に挟まれた、
歴史と自然を感じられる住宅街。

最寄りの4つの駅どこからも徒歩10分程、
という利便性を兼ねつつ

一歩足を踏み入れるとまるで別世界。

静謐さと、ほのかな温もり。

一見、何の飾り気もなく
あちこち古さや傷みは見られるけれど

ふと目に入る
レトロチャーミングにグッとくる。

壊してしまったら、
きっともうお目にかかれないものたち、

そして、積み重ねられてきた空気感。

品のある、クラシカルさがたまらなく良い。

この建物がまだ現役だった頃、
自分が京都の大学生で、学びながら

ここで暮らす、という人生を送っていたら…
なんてつい、夢想してしまうけれど。

それは無理な話だけども、
こうして綺麗な状態で残っているおかげで

まだこれから誰かに住まわれる未来がある、
ということが、
たまらなく嬉しく思えるのです。