やわらかなアーチの入り口、 その奥でひそやかに微笑む 若草色の愛らしい扉。 外壁は明るいインド砂岩で、 心まで晴れやかにしてくれる。

かわいいものを見て、 「かわいい！」と言い合う。 気づいたらそれが 私たちの日常になっていた。 だからこのお部屋を見たときも、 ふたりで顔を見合わせて 当たり前のように「かわいい！」。

左の建物が「hana棟」、 右の建物が「kaze棟」。 内見のときに「ご紹介するのは hana棟の2階の角部屋ですよ」と 不動産屋さんに言われたときも、 お花の香りが漂ってきそうな名前に ふたりで目を見合わせて喜んだ。

彼女に「ただいま」を言う前に、 ガスライト風の照明と さりげない扉のハートマークに 心の中でただいまを言う。

下の洋室は私のスペース、 上のロフトは彼女のスペース。 ウォークインクローゼットは ふたりで一緒に使っている。

やさしい色合いのお部屋には、 ふたりで「かわいいね」と 胸をときめかせながら選んだ 家具や小物たちが置かれている。 天井がスーッと高いので、

ロフトが定位置の彼女も、 のびのびと過ごしているみたい。 たまに暇を持て余したときは、 ふたりでロフトに寝転がり あれこれ語り合う夜もある。

お互い休日のときは、 お日さまが高くなるまで ふたりともぐうぐう眠っている。 彼女が先に起きたときは、 顔だけひょいとロフトから出して 「おはよ」と声をかけてくる。

好みが似ているので、 自然とお互いの服を シェアするようになった。 それぞれの服やバッグが ウォークインクローゼットの中で 混ざっていても、もう 私も彼女も気にしていない。

「この小窓が、意外といい」 ダイニングキッチンに行くたびに、 彼女がしみじみ言うのがおかしい。 そうだね、ちんまりでも大活躍。 お部屋を明るく照らしてくれる。

ひとりでは料理のやる気が あんまり出なくて、だいたい ふたりで一緒にキッチンに立つ。 2くちのガスコンロで、 メインとスープを同時に作る。

独立洗面台はゆったりした シャンプードレッサー。 おおらかな彼女は 手をワイルドに洗うから、 洗面ボウルが広いのは助かる。

彼女がためてくれたお湯が ひんやり冷えてしまっても、 追い焚き機能があるから安心。 雲ひとつない青空のような バスルームの壁を見ながら、 これは春の空かな、夏の空かな、 とひとりでまったり考える。

トイレと床は、洗面所と お揃いのクッションフロア。

ほどよいレトロ感が 私と彼女のお気に入り。

「かわいい！」とふたりで 顔を見合わせる瞬間は、 きっと多ければ多いほどいい。 お部屋の中でも、外の世界でも、 心がはずむ瞬間をまだまだ探そう。 おんなじ気持ちになるたびに、 これからがさらに楽しみになるからさ。

文・くまのなな 東京都在住のフリーライター。散歩中におうちの外観をつい見てしまう。主にツイッターにいます。 @kmn_nana