高級ホテルのラウンジと 見紛うばかりのこの空間。 要壁（かなめかべ）と名付けられた 2枚の壁が存在感を放ちます。 ゼネコン設計部に勤める お施主さんが自ら設計したという、 こだわりの詰まったお部屋です。

間取りは空間を広々と使った1LDK。 南側のパブリックゾーンと 北側のプライベートゾーンに ゾーニングされた空間になっています。

なかなか日本の住宅の中で 見ることのない重厚感のある2枚の壁。 単なる意匠ではなく、 手前の壁がキッチンのパントリー、 奥がワークスペースから使う書庫収納と、 それぞれ機能的な役割も担っています。

玄関に隣接する土間空間は リビングルームまで シームレスにつながります。 ウールのカーペットとモルタルとの 足触りの違いを楽しみたいですね。

ステンレス製の スタイリッシュなキッチン。 リビングともオープンにつながります。

朝日の差し込むワークスペース。 ここでの読書ははかどりそうですね！ スライド式の書庫になっているので、 大切な本を日に当てずに しまっておけるのも 本好きにはうれしいポイント。

リビングとつながる開放的な キッチンやワークスペースですが、 いざその場に立つと、要壁によって お互いに見えなくなる絶妙な位置関係。 料理の時間も読書の時間も 特別なものになりそうです。

そんな要壁はウォールナット材を 積み上げたようなデザインで、 光が当たった時の陰影も美しい。 土間のモルタル、ウールのカーペット、 ステンレス製のキッチン、そして ウォールナットの要壁と、 お部屋全体がプリミティブな材料で 構成されています。

夜になると、落ち着いた ライティングでまた違った表情を 見せてくれるのもこのお部屋の魅力。

水回りやベッドルームなどの プライベートゾーンは パブリックゾーンより 一段高くなっています。 ちょっと腰掛けたくなる絶妙な高さ。

中でも目を引くのが洗面スペース。 通路も兼ねるパントリー内にあり、 ミニマルなデザインで 空間全体にうまく馴染んでいます。

そのおかげで動線もすっきりと。 一段上がった分、天井高が 抑えめになっているので、 より一層落ち着いた空間に なっていますね。

壁と天井の際の部分が 折上げられていたり、 ベッドルームやクローゼットの上部に スリットが入っていたりと 細部に至るまで丁寧なデザインが 施されています。 こういった積み重ねが 全体としてのクオリティに つながっていくのでしょう。

天気が良い日にはバルコニーで 過ごすのも気持ちよさそう。 リモートワークもここで…と 考えるとワクワクします。

6階建ての最上階なので眺望も格別。 建物が雁行配置になっていて、 バルコニーも独立しているので 人目を気にせずゆっくりくつろげます。

マンション全体自体も 奈良県景観調和デザイン賞を 受賞したすてきな建物。 傾斜地を活かした見事な設計です。

そしてこの物件自体も、平成30年に 「住まいのインテリアコーデネーション コンテスト」にて特別審査員賞を 受賞しているそう。

寺社仏閣の多く残る矢田丘陵へも 徒歩圏内、 加えて大阪・難波まで近鉄線で 約40分と、都心にも自然にも アクセス抜群。 立地も建物もインテリアも 言うことなしのお部屋です。

文・佐藤シュン 浜松で設計事務所をやりながら、黒猫と暮らしています。