ため息がでるほどに美しい 和洋折衷のたたずまい。 縁側の長椅子に寝そべり うとうとと、まどろむ 長閑な昼下がりを過ごしたい。

こちらは熱海の高台エリアにある オーベルジュ（宿泊施設を備えたレストラン）。 元々は東京でレストランを 営まれていたオーナーさんが 築44年の建物を1年半かけて リノベーションし、営業されていたそうです。

こちらはリノベーション当時の様子。 建物本来の良さと暮らしやすさを考えて、 ご近所の数寄屋大工さんと 相談しながら綿密に作り上げたのだとか。 こだわりの甲斐あって、 どこを切り取っても絵になるような美しさが そこかしこに散りばめられています。

塗り跡が残る素朴な外観に 品のいいレトロランプが灯る、 なんとも素敵な玄関。

もともと広めの玄関ですが 壁にある大きな鏡のおかげで より明るく広く感じられます。 外に見えるアプローチの、 手入れされた植栽も麗しい。

入ってすぐはソファーがあるホール。 天井が高くて開口部も広いから 入るなり、おおらかな気持ちになれそう。

ソファーに座って玄関を振り返れば レトロな調度品がよく似合う 端正な内装にうっとり。 旅の疲れがどこかへ 飛んでいっちゃうだろうな。

続く和室は、海を眺めながら お食事ができるおもてなしの場。

ガラスの格子戸越しに海…！ まるで一幅の絵のようで 目にも素晴らしいごちそうです。

食卓から眺める縁側と 植物がバランスよく配置された ウッドデッキがたまらなく美しい。

ブランコにゆらり揺られて 海を眺めたり、 緑あふれる空気を感じながら お茶を飲んだりすれば、 この上なく心が洗われそう。

また、建物が持つ懐かしい建具が 丁寧に手入れされ、美しさを増し、 見る者の心を豊かにしてくれるようです。

ゲストルームは2階に2部屋。

18帖の洋室は 高い天井に味わい深い梁と シーリングライト。

新旧が見事に融合していて 上品ながら、肩ひじ張らない 居心地の良さ。

ウッドデッキのバルコニーは 外国風でとてもしゃれています。

白い壁に濃いブラウンの柱、 家具や緑の配置もセンスがよくて まるで、インテリア雑誌の1ページを 切り出したかのよう。

このお部屋の目玉でもある 特注のドレーキップ窓は 一つの窓で二種類の窓の開け方ができる 北欧に多いすぐれた窓。 内倒しにすれば雨の日でも 雨が吹き込むこともありません。

また、枠が大きく作られてあるので、 一枚絵のような景色を 存分に楽しめるのだとか。 しかもお部屋からは、 熱海名物の海上花火大会が 鑑賞できるんですって。 なんと素晴らしき環境！

そなえつけのデスクは 壁掛けの鏡があり ドレッサーとしても使えます。 いつもよりゆっくりと 身だしなみを整えたり、 懐かしい友人へ手紙を書いたり… 素敵な時間が過ごせそう。

もうひとつある7.5帖の居室も もちろんしゃれているんですよ。

押入れの襖は ウィリアム・モリスの壁紙に 張り替えられ、 華やかな印象にトーンアップ。

このようなリフォームの工夫は 他のところにも。 元々あった型板ガラスを 扉や窓に再利用したり、

葉山から取り寄せたという 細かい装飾の建具を加えたりなど、 いたるところに建物への 愛情を感じます。

タイル張りの浴室も素敵ですね。 昔懐かしい照明に型板ガラスが ノスタルジックですが、 今どきのくすみカラーを配色し、 モダンでハイセンスに仕上がっています。

和式だったトイレは洋式へ作り変え 和の風情を残しつつ 便利で居心地の良い空間に 設えたそうです。

愛情たっぷりに再生され 多くのお客様に愛された 熱海のオーベルジュ。 このままお店を開くこともできそうですし 個人宅として住むにしても、 とても魅力のある一軒家。 引き続き、愛情深く担ってくださる方に、 つながって欲しいなあ。

文・葱山紫蘇子 劇団維新派→色々→介護業を経験。漫画と建物と書き出し小説が好きな4人の子を持つ大阪のシングルマザー。 @sisokoex