こんなに複雑な梁の架け方は、 なかなかお目にかかれないと思います。

一体どんな経緯でこのような形に なったのでしょうか…。

外観はこちら。 昔ながらの街並みの中に残る 長屋をリノベーションした物件です。 モスグリーンにお色直しされた外壁に、 かわいらしいドアや照明が よくマッチしていますね。

変わった形の玄関ですが、 奥まった部分を上手く収納として 活用しています。 ベージュの壁色にすることで、 土間のモルタルや、床や建具の木の色と けんかせずに、上手く空間が まとまっていますね。

１階は12帖のLDK。 全体をブラウン系の色味で統一して、 柱や梁に濃い色を持ってくることで ぐっと引き締まった印象に。 同時にこの建物の 独特な構造を可視化しつつ、 効果的なアクセントにもなっています。

ピカピカのキッチンと 歴史ある柱の取り合わせが 面白いですね。 新旧の対比が効いています。

1階にはリビングのほかに水回りも。 トイレもお部屋と同じ壁色で 落ち着く空間に。

お風呂もお部屋と色味が リンクしていますね。

さて、こちらの階段で上階へ。

2階には9帖の洋室が。 1階と同様ブラウン系でまとめた中に、 グレーのアクセントが入ることで 一層さわやかな空間になっています。 あらためて見ても面白い構造ですね…。

間取りは1LDK。 斜めの壁で切り取られたリビングが 特徴的です。 おそらく、水回りの斜めの壁を 玄関まで延長したラインが 一番最初の建物の外形で、 その後、水回りの部分が増築され、 今の形になったのではないかと 思います。

梁の上に小屋束を立てる和小屋と、 合掌造りのように 三角形をつくる洋小屋、 2種類の屋根が架けられていることが わかります。 部屋の中央に出てくる柱を抜くために、 洋小屋の梁を斜めに架けて、 和小屋の梁を下から支えるような 構造にしたのではないか――、

――ベッドの中で そんな空想を巡らせながら、 建物の歴史に思いをはせるのも また一興。

どの部分を残して どの部分を変えるのかの 取捨選択が、リノベーションの 勘所だと思います。 この構造を残し、 建物の見どころに据えなおしてくれた 設計者さんに感謝です。

文・佐藤シュン 浜松で設計事務所をやりながら、黒猫と暮らしています。