佇まいは、いぶし銀。

でもどこかかわいげがある。
艶々の焦茶色、2階のバルコニー、
ちょっとせり出した屋根に、見える梁。
家の前の手入れの行き届いた木々たち。
絶妙に、良い空気をまとっている。
築57年、だそう。
色も形もチョコレートみたいな扉。

おばあちゃん家を彷彿とさせる、
懐かしいにおいがする。
新築にはないにおい。

この台所も、大好き。
絶対おいしいご飯が出てくる台所の景色。
食器もお鍋もたくさん置けるね。
作業台も広いから、作りかけおかずも、
切った野菜も、わさわさ置ける。

あの囲いの中に冷蔵庫を置くのかな。
なんだかホッとする、この素朴な色味。
茶色いおかずは大体おいしい、
に通じるものがある。（？）

お勝手口があって、窓が２つあるのもいい。
ガラスの向こうに透ける緑。

3LDKで、リビングはドアを隔てている。

そしたらここに
テーブルを置くことになるね。
丸がいいかな、四角がいいかな。
チラシとか、読みかけの本だとか
雑多なものが積まれていかないように、
がんばろっと。

お風呂はリフォームされたみたい。

実家感ある、落ち着くトイレ。
新聞読んで長居はやめてね。

そして、このリビングがとっておき！
溢れる重厚感、ヴィンテージ感。
この味わいは、新築君には出せまい。
石の壁に石煉瓦のマントルピース、
飴色のパーケットフロアに
天井まである棚、
良いでしょう、良いでしょう。
ひんやりと、じんわり、の絶妙な同居。
あの人の絵を飾りたいな、とか、
あの陶器の置物を飾りたいな、という妄想が
むくむくと浮かんでくる。
大きな棚いっぱいにレコードを並べて
オーディオに凝るのもいい。

石の壁のこのランプも
痺れるような、美しさ。

ロッキングチェアにワインが似合う。
なんとなく、夜が似合う。
湿った空気の日も似合う。

つまり、おこもり時間を
最高にしてくれそうな部屋。
薪はくべられないから、
ガスストーブを用意して。

2階は3部屋ありますよ。

あ、こういうちょっとした彫りがある
柱とか、好き好き。
意味もなく撫でてしまうな。
上り下りするたびに愛でる飴色。
家全体に実家のような温もりがあるけど
実家、こんなにおしゃれじゃなかった。

畳を剥がしちゃってるところで失礼。

ほんのり船底天井。
新しい畳が入るの、うれしいな。

おしゃれを狙わなくて、いいの。

けれど、こんな小窓があったりして
只者じゃないなって思わせる。
かわいい小窓と小棚、
昼間の読書スペースにしたい。

押し入れはこのまま襖を外して
使ってもよさそう。

表を向いた洋室はごくプレーンで
どんな家具も受け入れてくれそう。
子どもの勉強部屋っぽさがある。

収納のツヤツヤの合板の扉が
アクセントになっていて
なんだか懐かしさもある。
どこも明るくて風通しが良くて
気持ちが良い。

新婚の時に、この家に出会いたかった。
中目黒、祐天寺という
永遠の憧れみたいなロケーション。
しょっちゅう物欲が刺激されて
万年貧乏になりそうだけど。

ヴィンテージ家具や食器、
古本屋で集めた昔の生活雑誌、
友だちの個展で気に入って買った絵。
いざ子どもが生まれたら
なかなか手が出せないものを
若気の至りで集めてさ。
それか、御隠居の頃に
住むのにもちょうどよさそう。
2人でこんな家で過ごす老後、憧れるな。

家のあちこちには、巣立っていった
子どもたちの写真。

玄関前の花たちはいつだって
綺麗に手入れしたいし
時々古い車でドライブや旅に出たり。

でもやっぱり我が家がいいね、って
バッグとカメラを下ろしたら
トプトプトプ、ってほうじ茶淹れて
お土産のお菓子を2人でニコニコ頬張る。
そういう、温かくて静かなふたり暮らしが
似合いそうなヴィンテージなおうち。