ひと昔前の美容室や理容店って
窓やドア、その取っ手や
店名のフォントや植栽がかわいかったりして
街で見かけると、ふと足を止めて
眺めてしまうんですよね。

この建物、今は外から見ると
元々どんなお店だったのか
わからないのだけれど
美容室だったそうです。

思わず「おおお」と嘆息が漏れました。
アールを描く、
ガラスと淡いピンクタイルの仕切り…！
素晴らしい。
きっとモダンな場所だったんだろうな。
これは絶対に残さなきゃいけない…！
使命感にも近い思いが湧きました。
木やガラスをカーブさせる技術、
どうなってるんだろ、素晴らしいなぁ…と
しみじみ思うんですよ。

なるほど、この壁際には
鏡と椅子が並んでいたのですね。
シャキシャキ響く鋏の音、
パーマネントを当てるお母さん、
美容師さんと談笑しつつ
おしゃれして少し高揚した気分の女性たち
…なんて風景が
目に浮かんでくるようです。

いつからか止まったままの時間。
壁などはごっそり剥がされてしまっていても

かわいいチェッカーガラスに
真鍮取っ手のドアは
ちゃんと残されていて。
「壊されず待ってたんです、使ってね」
そんな声が聞こえてきそう。

店舗から繋がるこのドアを隔てたこちら側は
居住スペースになっていて、

外からは想像もできなかった、
町家のようなつくりに。

そう、ここは京都。
土間、そして細長く、天窓のある台所。
とは言っても、
おくどさんなどあったであろう場所は
今は何もないので、
新たに水場を設置してもいいかと思います。

ひっそりした室内は薄暗くも
どこか品性を保ったまま、

静かに次の住人を待っているかのよう。

特にググッときたのはこのコーナー。
階段の欄干と格子の窓辺。
素朴なつくりながらも、
うっとりしてしまう雰囲気があります。
窓の前に小机やスツールを置いて
花を飾ってたりして、
空間の美しさをより際立たせたい。
個人的にはお気に入りの椅子を置いて
読書スペースにしたいな…！と思いました。

この壁も、なるほど、花を置くだけで
侘び寂びな美を感じますよね。

土や木からできた天然ものは
年月を経て、傷みもするけれど

味わいも深まっていくから
やっぱり良いなぁと思うのです。

町家の構造、小屋裏が残っており
京町家として再生しても良し、
絶対に良い雰囲気になる！
そんな可能性をビンビン感じます。

壁など部分的に取っ払われているので
逆にこれからリノベしやすいのかな、と
思ったりしました。

住みながら、商いをする、
もしくは、アトリエとして制作活動しながら
オープンな場を作っていく、
店舗兼事務所として使う…
色々な使い方が可能だろうなと思いました。

外と中を行ったり来たりしつつ
この窓辺をどう活かせるか、

このカーブの仕切りをどう活かせるか…、
考えててすごくワクワクしました。
美容室の跡をそのまま受け継いで
美容室系が入ってもいいし
アンティークな空気をうまく活かした
生活雑貨屋、洋服屋さんも素敵。

レトロな喫茶店、
色んな豆を扱う焙煎所、
ドンとコーヒーロースターのあるカフェ、
なんてのも素敵だなぁ。
壁や床は大幅な修繕、改修が必要だけれど
天井の焦茶色の梁なんかは
そのまま見せても良さそう。

いくら新たに手を加えたとしても、
オリジナルの渋さや良さは
きっと滲み出てくるはず。
というより、新たに造るとなると、
絶対に出せない温度感、質感、空気があるんですよね。
センスも試されるけれど
新たな場所になった時、
過去の美容室時代のように
きっとまた集う人たちの
笑顔が見られるんだろうな、
そんな予感がビシビシするのでありました。