室内に足を踏み入れ 扉をくぐるたびに 異世界が広がる京町家。 どのお部屋も 見惚れるほどに素晴らしいのです。

メインスペースがある1階と 和室と洋室が左右に振り分けられた2階。 トイレも2か所あって ファミリーでも暮らしやすそう。

しっとりと黒い外壁は 街並みの中で凛と映えます。

縦格子の奥は

じんわりあたたかい黄土色の玄関。

廊下からダイニングへ 向かうこともできますし

そのまま躙り口をくぐり

茶室にあがることもできます。

間接照明の光で 陰影を楽しめる石壁は

襖を取り付けて お色直しすることも可能。

ブルーのインクに沈めたような まぁるい照明が 少し意外な雰囲気で いいアクセントになっています。

茶室とダイニングは 襖で仕切れるようになっていて

襖の向こう側は 一面タイルに木目のキッチン。 茶室とはひと味違う雰囲気です。

タイルの色味が絶妙。 光沢があるのに派手じゃなく マルチカラーなのに落ち着いています。 高い収納力を備えたキッチンは

木目に真鍮の取っ手が美しい。

ガスとIHがMIXの4口コンロは 料理好き歓喜間違いなしです。

キッチン背面の アールがかかった壁の模様は なんと手作業で仕上げられた 一点ものだそう。

ディテールのそれぞれにこだわりが見えて どんどんこのお部屋に引き込まれていきます。

かわいらしい坪庭と ガラスの引き戸が並ぶ景色も素敵。

水回りを彩るタイルは水の中を思わせる ブルーのグラデーション。

シャワーはホースまでブラックです。 生活感を打ち消すように 隅々まで作りこまれた世界観にうっとり。

階段を上がり

2階で待ち構えるのは

壁も襖も、障子紙までも 黒で統一された和室。

土壁の一面は その凹凸だけでアートのよう。

もう1部屋の洋室は 対照的に明るくて

古建具や

蕾のようなレトロな照明が センス良く組み合わせられ カフェみたいな雰囲気なんです。

よく日が当たるバルコニーも ベンチのような段差があって 心地良く過ごせそう。

そうそう、トイレに至るまで

2か所とも がらりと異なる内装で仕上げられています。

まるで家中のすべての扉が 異世界へと繋がっているよう。

外の世界と隔てられたようなこの部屋で 喧騒を忘れ、自分だけの世界に とっぷり沈み込むように暮らすのも いいかもしれないぞ…と 妄想にふけってしまうのです。

文・ほしりょうこ 散歩とビールと読書が好きな、元リフォーム屋さん。10年で8回の引越しを経験。もっぱら東京の西側にいます。 @hs_ryk