「◯歳までお互い ひとりで暮らしてたらさぁ、 うちら一緒に住むのもいいよね」

今よりずっと若いときに ポンと出たあの言葉が、 まさか現実になるなんて。 あのときはお互い 信じていなかったでしょう？

ふたつの洋室は、 それぞれの部屋として。 和室は一緒にゴロゴロする部屋に。 彼女が見つけてきた物件は、 ふたりで暮らしていくには なにも文句がない間取り。

北側の洋室は私の部屋。 置いてある家具は ベッドとデスクくらいなので、 6帖の空間がさらに広く感じる。

南側の洋室は彼女の部屋。 私の部屋と同じ6帖のはずなのに、 物があふれているせいで 実際よりコンパクトに見える。

フルリフォームされた内装は、 ホワイトベースのさわやか仕上げ。

「おばあちゃんになって もし家にいる時間が長くなっても、 部屋が明るいと気分がいいでしょう」 ふわりと笑って彼女は言う。 そうね、私たち一緒に 元気なおばあちゃんになりましょ。

和室もあるし、景色もいいし。 退屈な夜は布団を並べて、 ここでポツポツ話しながら 眠りに落ちるのを待つのも きっと楽しい時間でしょう。

バルコニーから見えるのは、 高い空とふわふわの雲、 さらには淡路島と橋と海。

何歳になっても飽きない景色が 暮らしのそばにあるのはいい。 こまめに太陽の光を浴びて、 気持ちを充電していきましょう。

年齢を重ねるごとに、 毎日の食事バランスを 意識するようになったふたり。 「赤と、緑と、あとは？」 「ええと、茶色？お芋とか」 色鮮やかな食卓はきっと 栄養も豊富だろうと、 アーティスト気分で 日々がんばっております。

増えていくシワやシミを 気にする彼女と、放置する私。 「たくさん笑った証拠なんだから シワができてもいいんじゃない」 「それとこれとは違うの」 鏡の前で繰り返されるのは、 毎度お決まりの会話だ。

部屋の内装と同じく、 水回りも明るいホワイト。

あんまりハイセンスだと きっと馴染めないだろうから、 これくらいのシンプルさが 私たちにはちょうどいい。

「ただいま」と「おかえり」を また言い合える日々が来るなんて。 人生なにがあるかわからないなぁと、 しみじみ感じていたりするのです。

「◯歳までお互い ひとりで暮らしてたらさぁ、 うちら一緒に住むのもいいよね」

ねぇ、あの言葉をたまに 思い出していたのは 私だけではなかったのかな。

人生が大きく変化するたびに、 あの言葉が現実になったら どれだけ楽しいだろうと考えた。 昔の私に教えてあげたいな、 未来はなかなか悪くないですよって。

ふたりで助け合って おばあちゃんになっていくのも、 きっとしあわせだと思うから。 まずは食事の管理と適度な運動、 一緒に意識していきましょ。

文・くまのなな 東京都在住のフリーライター。1991年生まれ。漫画と水遊びとおもちが好きです。主にツイッターにいます。 @kmn_nana