手間ひまこめられた建築というのは それが伝わってくるものです。 このお屋敷もそんな物件。

築90年を超えた新潟のお屋敷。 元々はお蚕さまをつくっていたんですって！

２階は働いていた人たちの お部屋だったそう。

リノベする際に、２階の天井を取り払い、 間取りも変え、 梁が見える開放的な空間に仕上げられました。

迫力と美しさが圧倒的な梁。

改めて職人技に震えます。

木の手すりもこだわられていて、 場所によって格子のデザインが違います。

障子窓から入る陽が 木々の表情を深くする。

いやはや味わい深い空間です。

そんな吹き抜けを灯す照明は オーナーさんが作られたもの！

照明つながりで注目したいのが ２階のトイレ。

天井の七宝柄の格子、 こちらもオーナーさん作なんですって！ なんてかわいくて縁起の良いデザイン……！

取り外せるので掃除もしやすく、 照明裏の絵柄も変えられるのだそう。

飾り棚も和のお花が似合う風合いです。

トイレだけでなくキッチンやお風呂など 水回りは新しくなっています。

基本的に段差がないようにリノベされた 生活しやすいバリアフリーなおうちです。

リビングの立派なテーブルも オーナーさんが作られたそうで驚き。

いたるところにプロ級のハンドメイド品や こだわりが詰まっています。

まだまだ見どころは尽きません。 １階のストーブは海外輸入の立派な品！

障子とストーブの組み合わせが 和洋折衷でとても素敵。

ストーブのおかげで ２階まで暖まるそう。

１階は床や壁の張り替えもされていて、

各部屋も伸びやかに暮らしやすいよう 作られています。

改めて間取りを見てみると、 部屋数が多く 大所帯で過ごすのにも便利な間取り。

２階の広い書斎、よく見ると扉がふたつ。 もともと２部屋作ろうと思っていたところ やっぱり大きくひと部屋にしよう！とした 結果だそうです。

環境も魅力的で 隣には公園があり、

周辺は田んぼと日本家屋が点在する のどかで静かなエリアです。

小鳥や虫の声だけでなく 冬は雪が降る音も聞こえるらしく、 そんな音に耳をすませながら ストーブで温めたお湯で 珈琲でも飲みたいわ…と 遠い目になっちゃいました。

お庭もオーナーさんの 審美眼が光っています。 石や植栽もイチから手がけられました。

見てください、玄関に続く この綺麗で大きな岩……！

この角度で撮りたくなるの、わかる。 石の迫力、建物の貫禄。

玄関上のガラス建具も かわいすぎて卒倒しそうです。

草木は一年通して楽しめるように 品種を選ばれています。

バラ、もみじ、松の木… それらが夜も楽しめるようにと ライティングもされています。 苔もご自身で植えられたとか！

じっくり家づくり、 庭づくりされたんだなあと 尊敬の念が尽きません。

裏庭は以前は竹が生えていたのですが、 ユンボをオーナーさんみずから 借りて整地したそうです。

竹は根が強いから大変ですよね…… 私も竹の処理に苦労したことがありますが それをここまで整えたご苦労に 頭が下がります。

きのこや野菜を育てられていたこの裏庭には ストーブ用にたくさんの薪が。

張り替えられた外壁も、 繊細な木の建具も、 ため息が出るほど美しい。

澄明な冷気に映える佇まいです。

敷地内にある２階建ての蔵も なんと自ら建てたそう。 除雪や農作業用具を収納するのに便利です。

10年近く手をかけ 育てられてきたお宅。 この家でお孫さんが 生まれ育ったそうです。

貫禄と美しさと個性。 それもこれも丹精込めて作り愛でてこられた オーナーさんのちから。

こういう物件こそ 残っていってほしい！と強く思います。

文・戸田江美

1991年生まれ。デザイナー。おばあちゃんの仕事を継いで荒川区のマンションの大家をしている。落語が好き。@530e

トダビューハイツ 想像建築