おもち。聞き慣れた言葉の響きである。その字面だけでも親しみがわく。
「おもちハウス」という物件名を聞いて、家がやわらかいとか、ぷくーと膨れるという想像をしてみようと思ったが、実際は大家さんの好物がおもちだから名付けられたのだろう。

そもそもおもち自体が、年に一度、もうすぐやってくるお正月に登場するだけでは勿体無い存在と言える。
きなこにあんこ、大根おろしに醤油、お雑煮。ご近所さんが集まり開催される餅つきという行事に至っては、おいしい上にたのしいイベントであり、季節感まで味わえる特別な時間を生んでいる。
そのおもちを物件名に用いたというのは縁起がいい。

ワンルームアパートの中はおもちという名の通り、まっしろな空間が用意されていた。

高い天井の窓から入る光が白壁に反射して、より明るく感じられるだろう。
設備は水回りの水栓が新たに交換され、各スペースに収納を造作。ロフトへのハシゴは、上りやすいようにゆるやかな傾斜に調整されている。

防犯対策にも精を出しており、新品のモニターホンは広角レンズである事に加え、来訪者に機械の音声が対応するあんしん応答機能付き。
部屋の窓はすりガラスに変更された為、臆する事なくカーテンを全開にする事が可能だ。

名は体を表すということわざがあるように、おもちという言葉の響きとそのビジュアルには平和的要素がある（喉に詰まらせてはいけないという懸念はあるが）。
例えば女性の初めての一人暮らしには嬉しい設備であると想像するし、高所の窓にカーテンを付ける時は、おもち好きの大家さんが相談にのってくれることだろう。

こつこつと手作業でリノベーションされたお部屋は、家自体がつきたてのおもちのようである。
お正月を待たずにいただきたい。