実家のお父さんは とても器用な人だった。 棚や学習机 何でも作ってくれるから 家の中は お父さんの温もりで溢れていた。 そんな記憶を思い出すような 手作りのお部屋が 私たちの住まいなの。

12帖のリビングに 個室が3つ。 それに、バルコニーが両側に1つずつ。 3人家族の私たちには 十分な広さのお部屋。

初めておうちに入ったとき なんて可愛らしい空間だろうと思ったの。 ペンキが塗られた建具も玄関の下駄箱も 手作りなんですって。 ペンキの素朴な塗装が 素敵でしょ？

外でどんなことがあっても このリビングに帰ってくると ホッとする。

床も天井も建具も 無垢材をたっぷり使っているから まるで森林浴をしているみたい。

足元から伝わる 木の心地よさ。 冬でも裸足で過ごしたくなっちゃうの。

それに壁は漆喰仕上げ。 ざらりとした質感に 個性豊かな表情。 壁をさらさらっと触る娘の癖は 私と同じみたい。

ここに暮らしてから 料理の時間が好きになった。 アーチの先には 自慢のブルーのキッチン！ 深い海みたいな色でしょう？

キッチンも無垢材で作ったオリジナル。 黒の取っ手がアクセント。 収納もたっぷりついているから お取り寄せの調味料や 季節物の大きな食器も 我慢しないでそろえちゃった。

キッチントップは真っ白なタイル貼り。 お掃除は苦手だったけど 一日の終わりに ピカピカに磨くのが ちょっと楽しみになったんだ。

一度にたくさんのメニューを作れるから 「今日はスープも作ろうかな」 なんて余裕も生まれたかな。

廊下からつながる6帖の洋室は ベッドを並べて寝室に。 バルコニーに面しているから 光がたっぷり入ってきて心地いい。

クローゼットや扉、 どちらも手作りの建具で 温かい雰囲気に満ちているの。

「車がついているね」 クローゼットの上についている車輪は 娘のお気に入り。 開けるとほら、これだけ大きいから 衣替えがいらないの嬉しいな。

4.5帖の洋室は将来の子ども部屋に。 「ここにドレスいーっぱいかけるんだ！」 娘にとっては お姫様のお部屋に見えるみたい。

洗面台も手作りだそう。 くすみグリーンの洗面台に タイルのシンク、 アンティークな雰囲気の水栓。 どこを切り取っても おしゃれな空間でしょ？

一日の終わりには 木目のバスルームで ホッと一息。 「バスタブが大きいから まだ子どもと入れるな」 嬉しそうでもあり、 寂しそうでもある夫の顔を見て この家に暮らしてよかったな と思ったの。

あちらこちらに 無垢材の手作りで溢れた 私たちのお部屋。 温かくて、優しくて、ホッとする。 そんな家の記憶が 家族に残ってくれるといいな。

文・よしだゆき 街散策とタイルをこよなく愛するフリーライター。元住宅情報誌編集者。築35年の中古マンションをフルリノベして暮らす2児の母。