憧れつつも どこか別世界の存在に思っていた京町家。 素敵だな、住んでみたいな、 でも京都のベテランさんが 住むところですよね…と つい遠慮してしまったり だけれども きちんと「らしさ」を残しながらも モダンにリノベーションされた この物件を見ていたら 「どうぞどうぞ、住んでみて下さいよ」と 言ってくれているような気がしたのです。

大正13年から存在する こちらの建物。 リノベーションを施されてなお 趣がむんむんに漂う外観に きゅっと胸が高まります。

なんと、床暖房がついている！ うれしい誤算とはこのこと。 底冷えが厳しい京都の冬も ぬくぬくと乗り切れそう。 さらに「古建具」の文字に ワクワクが止まりません。

玄関の中へ足を踏み入れると 横に広がる土間。 すりガラスと格子を通して入る光が ほわりと優しい。

こんな玄関収納ならば 一足くらい 下駄や草履を忍ばせたくなります。

玄関の向こう側には 早速キッチンのお出ましです。 このキッチンのかわいらしいことよ…。

タイルの絶妙な色味、 スタイリッシュな水栓に コンロはすっきりIH。

玄関の様子とギャップがあるようでいて 本体の木目や 小さな格子窓のお陰で 町家の空気によく馴染んでいます。

1階のお部屋は 玄関から向こうの坪庭まで見通せる 気持ちのいい空間です。

キッチン横にもスペースがあるし

階段回りの壁も開いていて 抜け感があります。 古道具屋さんで少しずつ このお部屋に似合う家具を集めて ゆっくりと育てていきたいなぁ。

お次は階段のぼって2階へ。

見上げると天窓があるのです。 これはかつての 「火袋」の名残でしょうか。 しっとりと落ち着いた空間に 優しい光が届きます。

階段室と仕切れるガラス扉。 空間の奥行きを残しつつも 2階をプライベートルームとして きちんと仕切ってくれる 名わき役です。

3帖の和室に お布団を敷いて寝たいな。

少し低くなった天井と 大きな梁が醸す安心感が 心地良い眠りにいざなってくれるはず。

ベランダは ちょっとの雨ならしのげそうな 頼りになる庇付き。 周囲の建物は近いけれど 壁に囲まれているようで サンルーム感覚で使える予感です。

水回りはすべて1階に。 ワイドなカウンターがうれしい 洗面台を中心に

右側にバスルーム （坪庭が望める窓付き！）、

左側にトイレです。 木目の腰壁や こだわりの建具のお陰で 旅館で過ごしているような 優雅な気分になれそう。

改めて家を見回すと 見上げた天井や

階段を降りようと 目線を変えた先、

出掛ける間際に目に入る 玄関。

隅々までこだわり抜かれた京町屋は そこかしこに伝統の工法が 散りばめられています。 だけれども 全体を通して感じるのは 暮らしやすさだったり 親しみやすさだったり… 憧れをそのまま残しながら 思い切ったリノベーションで 「伝統」やそれに近いものへの こちらの気負いを そっと取り払ってくれるよう。 いつか京都に飛び込む時は こんな京町家で暮らせるといいな…と 思いを馳せているのです。

文・ほしりょうこ 散歩とビールと読書が好きな、元リフォーム屋さん。10年で8回の引越しを経験。もっぱら東京の西側にいます。