もしも私が うつわ作家さんだったなら きっとこんなお家に住むでしょう。

玄関から まっすぐ奥まで貫く通り土間。 ここをショールーム兼自宅にして 時々作品を見てもらいながら 穏やかに暮らせる一戸建て。

室内に足を踏み入れると 一気に向こう側のお庭まで見通せます。 町家のような雰囲気です。

この棚に作品を並べてね ゆっくり歩いて見てもらうんです。 丁寧な手仕事でつくりあげた 陶器のうつわとかが とってもよく似合いそう。

もちろん窓際の飾り棚にも。 「光が当たると印象が変わりますよね」 なんて話しながら。 お庭には季節を感じられるような たくさんの草花を植えたいな。

どれにしようか迷っているお客様は 横の小上がりにご案内して 「食卓に並んでるところを イメージしてみてくださいね」って 小さなちゃぶ台にうつわを並べてもらって。 この部屋は 夜になったらお布団を敷いて プライベートルームに早変わり。

2階はワンフロアまるごとLDK。 梁見せの天井が渋い。 1階の土間と言い 趣がある建物なのですが こちらの物件、なんと2015年築だそう。 え、絶対年上だと思ってた。 そんな新米さんだったなんて。 今更な情報ですが びっくりじゃないですか？

造り付けの棚の充実っぷりがまた 「うつわ作家だったなら…」の妄想を 加速させるのです。 この食器棚があれば お気に入りの食器たちが いくらでも入りそう。

壁に沿って飾り棚もありますよ。 ここにはコーヒーカップとか 一輪挿しや雑貨たちを飾るのも 楽しいだろうな。

キッチンは カウンターで隠れているのが もったいないと思う程に スタイリッシュ。 シンクまで一体の天板とか グースネックの水栓とかが 全体的にウッディな空間の いいアクセントになっています。

その他の水回りは 1階小上がりの 襖の向こうにひっそりと。 意外なポジショニングが 隠しコマンドの様で なんだかワクワクしてしまいます。

グリーンとホワイトのタイルに 小窓から入る光がさわやかな 気持ちのいいサニタリースペース。

浴槽はなくシャワーのみですが タイル仕上げのこの空間だけが 他の居室と切り離されたように 海外インテリアを思わせる仕上がりで そのギャップにまた1つ 胸がときめくのです。

三角屋根に白い外壁、 窓の縦格子。 シンプルだけど 確かな和の空気が漂う外観。

ここを開けると 長い通り土間が現れるってことを 私と、私のうつわを愛する人だけが 知っている… そんな暮らしを妄想しては にんまりとしてしまう、 夢が広がる小さな一戸建てなのでした。

文・ほしりょうこ 散歩とビールと読書が好きな、元リフォーム屋さん。10年で8回の引越しを経験。もっぱら東京の西側にいます。