私は魔法使い。 平屋に住んでいます。 思うところあって ちょっと所帯を持ってみた。 猫と犬と夫と子どもが、 私の愛しい家族。

魔法使いと言えば ほうきで空を飛んだり あやしい惚れ薬を作ったり オーブンでパイを焼くのが 得意そうなイメージだけど、 私は苦手。 代わりに、 草花を育てたり 保存食を作ったり そういうのが得意。

庭には ハーブと 四季折々の花、 少し野菜も植えてある。

この家の縁側は 干し野菜を作るのに ちょうどいい。

春はことことジャム作り、 夏は梅シロップのかき氷、 秋は干し野菜、 冬は体を温めるハーブティーを。

元は売りに出されて空き家だった この平屋。 少々くたびれていたけれど 夫婦二人で、きれいにした。

初めてこの家を見た時に ピンと来た。 大きな木があって 部屋の広さもちょうどいい。

魔法使いが住むのに ぴったりなおうちだと。 古い家と魔法使いは とても相性がいいのだ。

台所はL字型。 飛行機のコクピットのように 料理道具を収納した。 おかげでここは 世界で一番、私が使いやすい台所。

濃ゆい赤と ミントグリーンの壁は 空間を分けるメリハリが効いていて 我ながら、上出来。 悩みに悩んで決めた色だから 余計に愛おしく思う。

玄関のタタキの色合い、 さりげなく気に入ってる。 シューズラックはこんなだけど お気に入りの靴は見せておきたいし。

夫とは、 この家の近くの大学に 通ってた時に知り合った。 え？魔法使いのくせに、 大学に行ったのかって？ そうだよ。 専門分野を深く学ぶことは 優秀な魔法使いになる秘訣。

卒業してすぐに 二人で暮らし始めた。 もうずいぶんになる。 その間に、 まず猫が来て 犬が来て 最後に私たちの 赤ちゃんがやってきた。

子どもが育ち 少し手狭になった我が家だけど イライラせずに 仲良く暮らせてるのは 私が腕によりをかけた 魔法のおかげ。

仕事終わりや 家事の合間に ハンモックに揺られて 庭を眺めると

昼間は陽の光の中 子どもと猫と犬たちが 庭でじゃれあって、 夜は月と星が空にきらめく。

家族とのんびり 静かにくつろぐ、 幸せの魔法をかけて じっくり迎える最高の時間。

私は魔法使い。 平屋に住んでいます。 居心地の良いおうちで 家族とのんびり幸せに暮らしています。

文・葱山紫蘇子 劇団維新派→色々→介護業を経験。漫画と建物と書き出し小説が好きな4人の子を持つ大阪のシングルマザー。 @sisokoex