ある日突然 京都に移住することにした。友達と。

彼女は大人になってからできた友達で 会うのは年に数回。 お互いフリーランスで働いてるのもあって 最初から妙に気が合った。

ある日のランチで彼女が 「京都に移住を考えてるんだよね」 と言うから 「京都…私も住んでみたいなぁ」 とつぶやいたら 「お、じゃあ一緒に住まない？」 と返ってきたのでびっくり。 だけど、それが冗談じゃないのはわかったので ハイボール2杯分悩んでから 「よし！京都行くわ！」 と宣言して。

あっという間に部屋が決まった。

そこは、細い路地の奥の奥。 「その土地らしさがあるとこに住みたいんだ」 というのが彼女の希望。 住宅地に無数に走る細い路地。 覚えられるか不安な住所。 これもひとつの京都らしさなのかも。

2階建て？と思ったら 高い天井の吹き抜けに 2つのロフト。 そう、初のルームシェアにして、 プライベート空間は、なんとロフトなのだ。 若干の心もとなさもあったけど 勢いとワクワクが勝った。

玄関を入ると広い土間。 「明日自転車買いに行くわ！」って 待って待って、私も行きたい。

高い天井に ナチュラルな木の素材感が気持ちいい。 まずは、大きなテーブルと椅子を用意した。 2人とも食べるのが好きだし ワークスペースにもなるように。

天窓は2人のお気に入りポイント。 家の中にいても 空から光が降り注ぐって 素敵じゃないか。 壁のポンポンとまあるいライトも かわいらしい。

2つのロフトは同じ大きさだけど ロフトの下が 片方は机、

もう片方はクロークになっていた。 壁に向かうと集中できるという彼女に 机の方を譲って クロークは共用で。

3.3畳のロフトはなかなか快適。 大きなマットレスに 小さな文机やライトを置いたりすると かつて憧れた某猫型ロボットの 押入生活に近いものがあるかも…。 そう思ったら胸が高鳴った。

タイミングによっては 向こうの彼女と目が合うことも。 一応、簡易カーテンみたいな感じで 布でもぶら下げようか、と話していたけれど 意外とお互い気にせず過ごせていて 結局そのまんま。

白くてピカピカのキッチン。 お互い料理が好きで楽しい。 相手が忙しいときは作ってあげたり お酒を飲んだ勢いで 2人で夜中に次々つまみを作ったり。

後ろの棚には お互い持ち寄ったキッチン家電。 彼女が持ってきたコーヒーメーカーが あまりに美味しいコーヒーを淹れてくれるので 早速随分お世話になっている。

家をほぼ決めた段階で 「あ、洗面台ないね」って気付いたけど もういいか！ってなって 実際そんなに不便はない。

朝はお風呂で洗顔したり キッチンで歯磨きしたり。 これ、2人とも 朝から出勤とかしないから なんとかなったよねーなんて言って 笑いあった。

逆に言えば 無いのは洗面台ぐらいで 水回りにはこうやって 小さな窓がついているし ちょっとした棚も そこかしこにあって とっても助かっている。

お互いにロフトやらダイニングテーブルやら 街のお気に入りのカフェで仕事したりして 暇な時とか はたまた仕事が停滞気味な時は なんとなく声を掛け合って 一緒に外をぶらついたりもする。

ちょっとコンビニ行こうよって 財布だけ持って2人で歩いてるうちに やっぱ飲み行こって そのまま飲み屋に入ったりしちゃって。

店員さんに 「何の友達なの？」って聞かれて 「ルームメイトです」って答えるたびに すごい、私、知らなかった街に 友達と住んでるんだ…って 自分でも少し驚いたりして。

きっとこんな暮らしは人生の中で ちょっとの時間かもしれないけれど だからこそ 友達と暮らす京都と ロフトに広がる私の世界を 楽しみ尽くしてやるのだ！と 考えていたら 口に出てしまっていたようで 「そだね、そうしよ」って ルームメイトが目の前で笑っていた。

文・ほしりょうこ 散歩とビールと読書が好きな、元リフォーム屋さん。10年で8回の引越しを経験。もっぱら東京の西側にいます。