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アーチの向こうで待ち合わせ

この物件は現在は募集終了している可能性が高いです。過去物件のアーカイブとしてお楽しみ下さい。

レトロなアパートで ふたりの暮らしが始まって、 あっという間に季節が過ぎた。 夏が来て、秋が来て、 冬が来て、春が来て。 とうとう二度目の夏が来る。

珍しい間取りの3Kは、 私たちの暮らしによく馴染んだ。 キッチン横の約6帖の洋室で、 毎朝ふたりで食事する。 帰りがバラバラなふたりだから、 せめて朝は一緒に食べようと 自然と集まるようになった。
早起きは得意だと 思っていたけれど、 まだ一度も彼女より先に 起きられたことがない。 目が覚めるといつも、 身なりを整えた彼女が 先にキッチンに立っている。
窓からたっぷりと差し込む 日の光を浴びながら彼女は言う。 「おはようございます」 ボサボサの髪を 手で撫でつけながら、 「おはよう」と彼女に返す。
リノベーションされた 築50年ほどのアパートを、 見つけてきたのは彼女だった。 「懐かしくて、落ち着きます」 そう言いながらゆるむ目元に、 一瞬で説得された。 「そうだね、私もそう思う」
懐かしさが残るこの部屋と、 日本の夏はよく似合う。 「暑いですね」「本当に」と、 うちわでパタパタと お互いをあおぐ時間が好きだ。
我が家にあるもので 唯一新しさを感じるのは、 センスのいいシーリングライト。 たまに「おしゃれですね」と、 ライトがふたりの話題に上がる。
7帖の洋室には布団が二組。 帰りが遅くなったときは、 彼女を起こさないよう忍び足で 自分の布団にもぐり込む。
彼女が起きているときは、 アーチの垂れ壁の向こうから 「おかえりなさい」の声。
畳に足を投げ出して、 本を読んだりぼんやりしたり。 アーチにするりと包まれながら、 自由に夜を過ごす彼女がいる。
足の裏で畳のやわらかさを 感じながら、彼女に言う。 「もう寝ているかと思った」 声に嬉しさがにじんでいないか いつも照れくさくなるけれど、 彼女は毎回さらりと返す。 「もうそろそろ、 帰ってくる気がしたから」

文・くまのなな 東京都在住のフリーライター。1991年生まれ。漫画と水遊びとおもちが好きです。主にツイッターにいます。 @kmn_nana

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