「海が見える家」っていうのが 唯一の条件だった。

結婚して最初の共同作業は 2人で暮らす家探し。 間取りとか、内装とか 考えたらキリがなくて 家からの眺望だけは 後から変えられないからってことで こだわることにした。

そうして見つけたこのお部屋。 大正解、大満足。 朝起きて部屋から海を見るたびに 青さに目を奪われて あの時の私たち、 よくぞ海にこだわった！って 褒めてあげたくなる。

間取りは2LDK。 築年数は経っているけれど 綺麗にリフォームされたこの部屋は 私たちにすぐに馴染んだ。

日当たりのいいリビング。 気持ちよく朝ごはんを食べたくて 丸いダイニングテーブルを 窓の近くに置いてみた。 テレビの場所が決められなくて そのまんま、テレビなしの生活。 その分、会話が弾むようになった気がする。

「対面キッチンじゃなくていい？」って 彼に聞かれたけど この方が、部屋が広く使えて 私は好きだな。 それに、いつも一緒に料理するでしょ。 2人で横並びになるんだから キッチンの向きは 気にしないよ。

お互いずっと一人暮らしで 小さなキッチンに慣れていたから システムキッチンの すべてがスペシャルに見えた。 コンロは3くちだし、作業スペースがあるし 大きなお鍋が洗えるシンクもある！ 3くちコンロをフル活用したくて おかずが豊富な毎日が続いている。

リビングの隣は和室。 実家以来の畳がうれしくて 暇さえあればここでゴロゴロ。 本を読んだり、ゲームをしたり、 時々思い出したように立ち上がって ベランダに出て海を眺めたり。

収納が多いのも このお部屋のお気に入りポイント。 奥行きたっぷりの押し入れは 想像以上になんでも入る。

もう1つの洋室にも 特大クローゼット。 服をあまり持たない彼は スペースを持て余して 下着までハンガーに 掛けはじめたもんだから 笑ってしまった。

洗面台の上まで収納があるのは ストック好きの私にとって かなりの高得点。 歯ブラシとか洗剤とか ついつい買っちゃうんだよね。

ここに住み始めて 彼が長風呂派だって初めて知った。 よく入浴剤を買ってきては うきうきとお風呂に向かっている。 今日の入浴剤よかったね、と伝えると 必ずリピート買いしてくれるのが マメだなぁと感心する。

内見の時に彼が 「ペーパーホルダーが2個もある！」 と叫んで 不動産屋さんに笑われたこと、 トイレに入る度に思い出して 吹き出しそうになる。 まぁ、確かにうれしいけどね。

なんだかんだで 家の中までしっくりきたのは とてもラッキーだった。 本当に、この眺めだけでも 満足なんだから。

この家に住み始めて 面倒だった洗濯が 毎日の楽しみになった。 早起きして、海を眺めながら 丁寧にシワを伸ばして 干してゆくのが 最高のリフレッシュタイムに変わった。

嫌なことがあっても 海が綺麗だと気分が和らぐ。 天気がよくて 富士山なんか見えたら なお和らぐ。

彼とのくだらない喧嘩が減ったのも きっと気のせいじゃない。

ここ、二宮特有の エメラルドグリーンの海、 通称「ニノミヤブルー」。

毎日そこにいてくれて、 ありがとう。 君を選んでよかったよ。

畳の上でうたた寝する彼を横目に 海に向かって、心の中でお礼を言った。

文・ほしりょうこ 散歩とビールと読書が好きな、元リフォーム屋さん。10年で8回の引越しを経験。もっぱら東京の西側にいます。