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ふたつ並んだ、ふたりの扉

この物件は現在は募集終了している可能性が高いです。過去物件のアーカイブとしてお楽しみ下さい。

仲よく並んだふたつの扉。 右が僕で、左があいつ。 それぞれの部屋に繋がる扉は まるで寄り添っているようだけど、 そこで暮らす僕らといえば。

「部屋にクローゼットは 絶対に必要だから」と 我が物顔で左の部屋を 手に入れたあいつは、 今日も今日とて自分の世界。

ひょうひょうとした態度で、 やれお腹が空いただの やれ退屈で倒れそうだの わがままな要望を僕に伝える。

せっかくの7.5帖の部屋、 居心地だっていいだろうに。 自分のクローゼットだって ちゃんとあってさ、いいよな。 それなのに、あいつの定位置は なぜか自分の部屋じゃない。
だいたいリビングに置いた ふっかふかのソファを ひとりじめしているか…
自分の部屋より いくらかコンパクトな、 5.5帖の僕の部屋にやってくる。 「自分の部屋に行けよ」と そのたびに言うけれど、 はいはいと返事だけをして 結局は居座られてしまう。
根負けした僕が 自分の部屋をゆずる気持ちで しぶしぶリビングに行くと、 待ってましたと言わんばかりに あいつはひょいとついてくる。 そして、後ろから言うんだ。 「そろそろお腹が空いたよね」
その言葉は、つまり なにか作ってくれってこと。 どうしていつも僕が?と 複雑な気持ちになるけれど、 ニコニコと期待する顔を見ると 毒気を抜かれてついキッチンに立つ。 甘いと言われたら、その通り。
「クローゼットがある部屋は ゆずってやるから、この納戸は 僕の収納スペースにするからな」と 確かに伝えたはずで、あいつも 「わかった」と了承したはずで…
なのに、いつの間にか ふたりで使う納戸になった。 想像の範囲内ではあるけれど、 解せない。どうしてこうなるのか。 まだスペースに余裕はあるから、 まぁ、いいっちゃいいんだけど。
この部屋を見つけてきたのは あいつだったから、借りがあると 無意識に思っているのかもしれない。 ところどころにこだわりがあって、 派手すぎない落ち着いた空間。 いい部屋だと思う、本当に。
「この部屋どうかな!」と 珍しくはしゃぐあいつを どうどうとなだめたのも懐かしい。

特にバスルームはお気に入りのようで、 ほぼ毎日鼻歌まじりで長風呂だ。 入るタイミングを逃すと たっぷり待たされるから、 どうしたものかと思っている。

トイレに長居するのは、 どうやら僕のほうらしい。 もしくはあいつがただ 待つのが苦手なだけなのか。 だいたい「入ってる?」と わざとらしく扉をノックされる。
ちゃんと鍵をかけているから、 入っているかどうかは 見ればすぐにわかるだろうに。 あえてキョトンとした声を 出しているところが、腹立つ。
「あいつに付き合えるのは おまえくらいだよ」と、 よく共通の知り合いに言われる。 わかる、僕もそう思う。
どうして一緒にいるのかと 聞かれても、よくわからない。 だけど、不思議とあいつから 離れようとは思わない。

ふたつ並んだ扉のように、 いつでも仲よしではいられないけど。 それでも、もうしばらくは あいつの隣で過ごすのもいいかな。

文・くまのなな 東京都在住のフリーライター。1991年生まれ。漫画と水遊びとおもちが好きです。主にツイッターにいます。 @kmn_nana

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