どんよりした曇りの日も、 ばしゃばしゃの雨の日も、 しんしんとした雪の日も。 「青空が見たいな」と思えば、 いつだってそこにある。

だからもう、私たちは大丈夫。 すぐ近くにある青空が、 ふたりに元気をくれるから。

ふたりともクタクタで、 ひとりじゃどうにも がんばれそうもないねと。 守り合うようにふたり 寄り添い始めたあの日から、 あっという間に時間が過ぎた。 今ではこうして同じ部屋で、 笑って泣いて怒っている。

たくさんの部屋を チェックする気力すら 失っていた私たちと、 まるで運命みたいに 出会ってくれたのがこの部屋。

切り取られた青空が、 まるで「ここにおいでよ」と 言ってくれているみたいで。 「いいよね」「そうだね」と、 迷うことなく決断した。

天窓から入ってくる光が、 さわやかなブルーに キラキラと反射して。 この青空のそばにいるために、 真下に大きなソファを置いた。

私がソファにごろんと 背中をあずけていると、 彼女は床にごろんと寝そべる。 彼女がソファにいるときは 私が床に背中をくっつけて、 ふたりでぼんやり青空を見る。

この部屋に越してきてから、 ふたりとも少しずつ 元気になってきた気がする。 ああでもないこうでもないと 迷いながらも慣れない料理に 挑戦するくらいには、 気力体力を取り戻している。

住み始めたころは ちっとも使ってもらえなかった 大きなアイランドキッチンが、 「ようやく出番ですか」と うれしそうにしているみたい。 ようやく出番ですよ、 上手に作らせてくださいよ。

2ｍ以上もあるキッチンは、 ふたりで並んでも ちっとも窮屈さを感じない。 ひとりだと面倒な作業も、 ふたりでやれば楽しい時間だ。

「おしゃれな料理本や スパイスを並べよう」と ふたりで決めた可動式の棚は、 まだスカスカのままだ。 賑やかな棚を夢見ながら、 焦らずにゆっくり 料理に慣れていこうと思う。

5.5帖の洋室に、 テレビは置かなかった。 ベッドがひとつあればいい。 情報ばかりは疲れるから。

すべすべの無垢の フローリングを裸足で ペタペタ歩きながら、 だいたい同じ時間に ふたりで布団にもぐりこむ。

ここにも、青空。 朝のぼんやりした頭で、 ブルーを眺めるのが好きだ。 それは彼女も同じなようで、 たまに目を覚ましても ベッドから起き上がらずに ふたりで空を見上げている。

収納は、はんぶんこ。

お互いの荷物を 圧迫しすぎないように、 ウォークインクローゼットを 仲よく一緒に使っている。 入りきらないものや 使う頻度が低いものは、

廊下の棚にポンポンと 放り込んでいる。

掃除は週末にふたりで ザッとやるくらいだけど、 洗面所のタイルだけは 小まめにゴシゴシ磨いている。 青空に浮かぶ雲みたいな色、 きれいなままでいてほしいから。

ふたりともずっと シャワー派だったのに、 気づいたら浴槽につかる派。 久しぶりにお湯に体を沈めたとき、 あまりにも気持ちよくて このままとろけてしまうかと思った。

脱衣所やトイレの床は、 なんだかシックだ。 お部屋がナチュラルだから、 変化があって気に入っている。

いろいろなことから 逃げるようにふたりで 暮らし始めたけれど、 いい選択だったと思う。 「帰ればもう安心だから」と 自分に言い聞かすことで、 日々を乗り越えられたから。

ふたりともずいぶん 元気になったけど、 まだまだ一緒でいいよね。 あの青空と離れるなんて、 きっと耐えられないでしょ。 お互いと離れるなんて、 ぜんぜん想像できないでしょ。

文・くまのなな 東京都在住のフリーライター。1991年生まれ。漫画と水遊びとおもちが好きです。主にツイッターにいます。 @kmn_nana