新宿高層ビル群が 目の前に広がる毎日。 住宅街の2階からの景色が 日常だった自分にとっては ずいぶん非現実的だ。

長い東京生活で 仕事は順調にステップアップしていった。 ありがたいことに収入も増えてきたけど あと数年したら 独立して地元に帰ろうかな、 と真剣に考えた時に 残りの時間で どっぷり都心に浸りたくなって 思い切って引越しを決めた。

もう東京に住むことはないならば、と思い 少し…いや、かなり頑張った家賃で 見つけたのがこの部屋だった。

広い広いワンルーム。 大きな窓が2か所にあって 見える景色は東京そのもの。 なんてったって、 目線の先に見えるのは都庁だ。

ワンルームとは言っても 玄関を入ってすぐスレート床、 その先はフローリングだし 中央のキッチンエリアとその奥では フローリングの向きが変えられていて なんとなくゾーニングされているのが 広い部屋ビギナーとしてはありがたい。

備え付けの収納は かなりのキャパシティ。 半分は棚板付き、 もう半分はハンガーパイプ付きで 使い勝手もよさそうだ。

キッチンもワイドサイズ。 吊り戸もあるし、 キッチン本体にも扉がいっぱい。 広々シンクの両側にスペースがあって 調理家電も色々置けそう。 まずは、とびきりおしゃれな コーヒーメーカーかな。 大きな窓の横に カフェテーブルを置いて 朝のコーヒーを飲むのが 1番の楽しみなのだ。

奥には、シンプルなベッドと PCが置けるくらいのデスク。 できるだけスペースを残して ビル群を眺めながら 宅トレしたり… するかな、しないかもな。 でも、それぐらいすっきりした空間にして 窓の外の眺めを主役にしたい。

この、珍しい内装の水回りも かなり気に入っている。 床から壁まで揃いのテラコッタタイルで 洞窟の中にいるような 不思議な感覚になる。

洗面台のカウンターは大きいし トイレには ホテルでしか見たことないような タオル掛けがついてるし お風呂は浴槽だけが ラフに置かれた潔さ。 それぞれの存在感が際立っている。

コンクリの外壁に 真ん中がぽっかりと抜けた 共用部。 ここもなんだか クールでアーバンな雰囲気。 短い期間で この空気感に馴染めるといいのだけど。

車がぴゅんぴゅん走る 山手通り沿いに建つマンション。 こんな場所に住む日が来るなんて。

窓の外の夜景を眺めて 今日の都庁は何色かなぁとか あのビルでは まだ働いている人がいるぞとか 毎日飽きずに考えるのかな。

大きな窓の前に立つと 都会の真ん中に ぷかりと浮いているような 気分になれるこの部屋で そんな日々を想像しながら 期間限定のアーバンライフを 味わい尽くしてみようと 決意したのだ。

文・ほしりょうこ 散歩とビールと読書が好きな、元リフォーム屋さん。10年で8回の引越しを経験。もっぱら東京の西側にいます。