「一度すべての物や価値観を捨てて まっさらな状態から始めてみたい」

そんなことを思ったことはありませんか？

「あるある」 ってピンと来たならば こちらのお部屋が 呼んでいるかもしれません。

なんにもない、玄関。 ざっくりと施されたコンクリートに アクリル絵の具のように、 こっくりと白い玄関ドア。

「ザッザッ」て 足音がするんだろうか。 シンプルな革靴を1足だけ 置いておきたい。

玄関の先に広がるのは どこまでも続く 土間と 白い壁 それに、ポツンと孤島のように佇む 小上がりだけ。

おしゃれなアクセントクロスだって 間仕切りだって 収納だってなーんもないんだから。

いやいや、本当に？ と思ったならば 間取り図を見てください。

ほらね、なんもないでしょ？ すっきり、とことんミニマルなワンルーム。

凛とした空気さえ感じる 真っ白な空間。 なんだか家具を置くのが勿体ない。

まっさらな状態になってみると 何が本当に必要なのか 見えてくる。

シンプルな一人用のダイニングセットと 服を数着掛けるハンガーラック ふかふかの布団とパイプベッド。 う～ん、きっとこれくらい。

壁は場所によって ゴツゴツしていたり ツルツルしていたり。 コンクリートブロックの この質感、 味わい深い。

すのこのような小上がりには ベッドを置こう。 壁にもたれたらソファにもなるから 真っ白な壁に映画を映すのもいいな。

土間では海外のように土足で過ごして 小上がりに上がるときだけ 裸足になるスタイル。 最初は慣れないかもしれないけれど 気がついたら 土間にいる時間のほうが長かったりして。

天井を眺めると ぽっかりと開いた明かり窓。 ぽわんと光が入ってきて 電気を消したら まるでお月さまのよう。 なんだか吸い込まれてしまいそう。

お部屋の中心には照明がありません。 その代わり 壁に並んだ ライティングレールがありました。

照明を楽しむために 厳選したアートを飾るのもいいですね。

キッチンだって 無駄をとことんなくしてスタイリッシュ。

キリリとしたステンレスのキッチンは この部屋唯一のインテリアです。 カーブしている水栓の影が アートのようにも見えます。 換気扇は梁の奥に隠れて控えめに。

水回りも「ここまできたか！」 というほどミニマルに。

「ゆったりとお湯に浸かりたい」 という方には物足りないかもしれないけれど オーバーヘッドシャワーで ザバッとシャワーを浴びるのも 案外悪くなさそうです。

気がついたら増えている物や価値観。 なかなか手放すのは難しいけれど 一度まっさらな空間に来てみると 「本当に必要なもの」が見えてきます。

ミニマルな部屋は 身も心も軽くしてくれる。

もしかするとこの部屋に引越すときには スーツケース1つかもしれませんね。

文・よしだゆき 街散策とタイルをこよなく愛するフリーライター。元住宅情報誌編集者。築35年の中古マンションをフルリノベして暮らす2児の母。