ワンルームで暮らしながら、 リモートワークを続けていたら 1日の境界線が わからなくなってしまった。 同じ部屋で、寝て、食べて、仕事して。

なんだか嫌になったから 思い切って引っ越した。 というか、勢いで家を買った。

「うそ、買ったの！？」 と、友達には驚かれる。 その理由は多分、 「独身なのに？」って ことなんだろうな。

そのたびに 「資産価値があるし…」とか 「結婚しても住めるし…」とか 返していたけど 気に入った場所に ピンときた家があって それが賃貸ではなく売り物件だった、 ただそれだけのことなのだ。

結婚しても住めそうな 間取りというのは本当。 でも、今のところ、 私だけの城として あれこれ暮らしを想像している。

最初に心奪われたのが この、木箱を組み合わせたような デザインのキッチン。 食洗器までついている。 おしゃれを取るか、 機能性を取るか、なんて 考えがちだったけど そんな二者択一の時代は いつのまにか終わっていたらしい。

LDKは 縦長でフロアタイルに なっているところが好き。 それでいてオープンラックには 木が使われていて あちらこちらに設えられている。 この素材のメリハリが 格好いいと思ったんだ。

クローゼットの中は 大好きなロイヤルブルーが隠れていた。 この色がチラリと見えるように 物の量は調整しよう、と思える。

天井に走るパイプは 部屋干し用かな。 ドライフラワーとかを ぶら下げても素敵じゃない？ 右に見えるオープンラックと スリムなデスクも気が利いてる。 とても明るい場所にあるし ドレッサーにしてしまおうか。

もう1か所の収納の中は グリーンだった。 見えない場所で こっそり色を変えてくるという その遊び心が、 たまらなく好き。

キッチンの横には なんとサービスルーム！ おこもりワークスペースに構築したい。 リモート会議とかでは どうしても生活感が チラ見えしてしまうものだから この空間があるのはうれしい。 お隣の洋室との間の 4つ並んだ室内窓もかわいい。

3.5畳の洋室は 日当たり抜群。 ここは寝室にするつもり。 寝起きの悪い私は あえて遮光カーテンはせずに 朝日を浴びて起きる予定だ。

さすがに家を買うとなると なかなか決断出来なかった私の 背中を押したのが このサニタリールームだ。 グレーの洗面ボウルに ブラックの水栓金具。 大小まぁるいの鏡。 お気に入りのバスグッズやタオルを いくらでも置けそうな棚。 ここで身支度をする自分を想像したら 海外ドラマのワンシーンのようで （絶対誰にも言えないけど） あぁ、もうここに住んでしまおう！ と思ったのだ。

もちろんその妄想は 入浴タイムまで続く。 スケスケの扉を開けると 真っ白のサブウェイタイルの浴室。 シャワーや小物入れは シルバーでスタイリッシュだ。 朝起きてシャワーを浴びたら ワークスペースで コーヒー飲みながら仕事。 うん、なんか、かっこいいぞ。

この家があるのは 中野坂上。 目と鼻の先に 新宿高層ビル群が見える。 あまりのオフィス街の近さに 最初は住むイメージが湧かなかった。

だけど実は 丸の内線で西に向かえば カルチャーに満ちた街、高円寺や 温かな日常の街、阿佐ヶ谷なんかに 程近いエリアが広がっているのだ。

全く表情の異なるエリアを 行き来できるこの街は 気持ちを切り替えるのが 苦手な私に合っていると思う。

気を抜けば 流れるように過ぎていく日々。 もっとリズミカルに 毎日を生きたくて 自分の城を手に入れた。

お気に入りのキッチンや おしゃれなサニタリールームに 立つたび、 ワークスペースで 前より仕事が捗るたびに、 あぁ、私の選択は 間違っていなかったなぁと 心から思うのだ。

文・ほしりょうこ 散歩とビールと読書が好きな、元リフォーム屋さん。10年で8回の引越しを経験。もっぱら東京の西側にいます。