なんだかんだ いつも一緒にいるから、 じゃあいっそのこと ふたりで暮らしてみましょうかと。 ゆるりと始まった生活は、 なんだかんだ数年も続いている。

スタイリッシュなお部屋、 クールでハイセンスなお部屋、 都会的でハイカラなお部屋。 たくさんの物件を見たけれど、 あまりのおしゃれさに ふたりとも圧倒されてしまって。 「最近のお部屋はすごい…」と クタクタになったところで、 やっといまの物件と出会った。

「畳、あるのね」と 彼女がつぶやいて、 私も「そうね」と返した。 ふたりで顔を見合わせて、 思わずニンマリ。 気持ちがやっと ほどけていくのを感じて、 「ここにしようか」と 自然と決めた。

緑のクロスが、いいでしょう。 お部屋に入って、 すぐに見えるのがすき。

玄関扉もグリーン。 私たちはふたりとも 植物をよく枯らすから、 こういうところで緑があると 目にやさしくてありがたい。

食事は基本的に別々だけど、 タイミングが同じなら ローテーブルで一緒に食べる。 食の好みが似ているのは、 こういうときいいなと思う。 シシャモを焼いたやつで テンションがすこぶる上がるのは、 私たちくらいな気がするから。 「シシャモは意外と高級品」と、 彼女は食べるたびに言う。

コンロは持ち込みだったから、 彼女が使っていたものを えいしょよいしょと運んできた。 カフェみたいなおしゃれな キッチンもすてきだと思うけど、 私たちにはこれくらいがいい。 生活感を丸見えにしても、 許されるだろう安心感。

「私は細かいほうだから」と 彼女は言っていたけれど、 むしろ大雑把なのでは？と 思うことがたくさんある。 掃除機をかけるときに お部屋の角をサボっているの、 私知ってますからね。

なのに洗濯にはうるさくて、 「こうやるとシワが伸びる」と ぶつぶつ言いながら干している。 こだわるポイントが複雑だ。

畳の上にごろんと寝転んで、 ずっと昔に買った本を 読み返す時間がホッとする。 新しいものについていけないと ポソリと彼女にこぼしたら、 「肉離れになるから 無理して追いかけなくていい」と なぜか体のことを心配された。 確かにお互い運動不足よね。

和室はふたつとも6帖だけど、 押入れの広さが違う。 広い方がいいなぁと 心の中で思っていたら、 「あなた荷物が多いでしょう」と 彼女のほうからゆずってくれた。

頼りがいのある奥行きで、 私の大量の荷物も すべて受け入れてくれた押入れ。 ありがたい、感謝します。 天袋だけは彼女と共有にして、 いつもは使わないものを すっぽりと隠している。

家にいるときはお互い 自室にいることが多いけれど、 扉はいつも開けたまま。 ひとりの空間がありつつ、 近くに人の気配を感じる。 それくらいの距離感がいい。

たまに彼女の部屋から 笑い声が聞こえてきて、 あまりにも激しいと なになに？と覗きに行く。 だいたいラジオで爆笑していて、 そのまま流れで 一緒に聞いたりもする。 パーソナリティの方の 小粋なギャグは健康に効く。

「たまにはハイカラなものを」と キラキラした丸い入浴剤を 彼女が買ってきたけれど、 お湯になかなか溶けないから 足で一生懸命砕いたらしい。 私たちにはやっぱり 温泉の素がいいと思うの。

冬場の冷えた便座は 私たちには凶器になるから、 お尻を守る便座カバーを しっかりとつけている。 冬も安心、ぬくもりの便座。

ベランダの広さは、 お互いに気に入っている。 たまにふたりでベランダに出て、 「いつの間にか春ねぇ」 「気づいたら冬！」と 時の流れに驚いたりする。

これから先どうなるかは、 誰にもわからないけれど。 ふたりで支え合えるうちは、 この暮らしも悪くないでしょ。

できるだけ健康でいてね、 しっかり食べてしっかり眠って。 私たち運動をいつも避けるから、 たまには重い腰を上げて、 ふたりで散歩に行きましょう。

文・くまのなな 東京都在住のフリーライター。1991年生まれ。漫画と水遊びとおもちが好きです。主にツイッターにいます。 @kmn_nana