自分の記憶の中に 実際にあるわけではないのに、 なんだか懐かしい。 むかしむかし、 やさしいおばあちゃんと ここで過ごしたような、 そんな不思議な気持ち。

なにか悲しいことがあっても、 パッと明るい外観が 視界に入ればきっと 自然と気持ちがゆるむ。 愚痴も不満もすべて、 おばあちゃんにじっくり 聞いてもらおうって。 そう思いながら 階段をトントンのぼる。

10帖の洋室がひとつに、 4.5帖の和室がひとつ。 和室は寝る部屋かな。 植物を育てるのが上手な、 魔法使いみたいな おばあちゃんが 出迎えてくれたら最高だ。

「おばあちゃん…」って めそめそしながら 部屋に入ったら、 なにも聞かずに あたたかい飲み物を いれてくれてさ。 「まずはおなかを あっためなさいね」って、 にこりと笑ってくれる。

おばあちゃんの すてきなセンスで選ばれた アンティークのテーブルに、 甘いお菓子もコトリと置かれて。 「おなかが減ると、 人はかなしくなるからね」 そんな避難所みたいなところを、 つい想像してしまいました。

お花畑みたいな かわいいフローリングは、 いつでもピカピカでいてほしい。 水やりみたいなものと思えば、 掃除もこまめにできるかな。

押し入れのすきなところは、 奥行きがたっぷりあるところ。 収納力はピカイチです。

いつもはガチガチに 強がっている心も、 このお部屋ならゆるみそう。 明るいうちから 畳にごろんと寝転んで、 外の音を聞きながら とろんとまどろむ。

「寝ちゃったみたい。 毛布かけてあげてくれる？」 ポソポソ聞こえてくる おばあちゃんと おじいちゃんの会話を、 ウトウトしながら 聞いたりしてさ。 夜になったら、 おいしそうな夕食のにおいで 目を覚ましたい。

落ち着いたウッドの床に、 やさしいイエローのタイル。 寝転がりたくなる畳に、 ちらりと見える洋室のお花畑。 すべてがすきだ、なんて穏やか。

2くちのガスコンロとグリルで、 あたたかい食事を作ろう。 おなかをホカホカにすると、 気持ちも元気になるから。 心の中でおばあちゃんが言う。

脱衣所には洗濯機置き場。 服をポイと放り込んで、 ざぶんとお風呂に入りましょ。

キッチンにも窓、 脱衣所にも窓、 お風呂にも窓。 風通しのいいお部屋は、 モヤモヤも風に乗って 消えてくれそうでいい。

トイレはふんわりした うすーいピンク。 さりげないかわいさが、 このお部屋にぴったりです。

玄関のフローリングは、 濃さの違う正方形が パッチワークのように 愛らしく並んでいます。

キッチンのフローリングとは、 また違う雰囲気なんですよ。 場所によって床が 違う表情なのがおもしろい。

シューズボックスではなく、 靴箱と呼びたいな。 お部屋のイメージに合う ナチュラルな木の靴箱。

窓から見える景色だって、 見たことはないけれど なぜだか懐かしいんです。 車や自転車の音を、 窓からぼうっと 聞いたことがあるような。

やさしいおばあちゃんとの たくさんの思い出も、 ここに詰まっているみたい。 「おばあちゃん、 ちょっと聞いてよう」って、 甘えてべそをかきたくなる。

そんな、不思議な 気持ちになるお部屋でした。

文・くまのなな 東京都在住のフリーライター。1991年生まれ。漫画と水遊びとおもちが好きです。主にツイッターにいます。 @kmn_nana