都心だと、たとえば
銀座や神保町あたりを歩いていると
古びているけれど渋くて凝ったつくりの
建物がチラホラと残っていて
ついつい足を止めてしまうんです。
喧騒の中、静かにじっと佇むその姿。
派手さはなくとも、ピカピカじゃなくても、
細かい所の装飾美、漂う風格に
揺るぎない芯の強さのようなものを感じて
ググッとくる…
この建物もまたそうでした。

遠目から見て、どうですか、この姿。
めちゃくちゃかっこよくないですか？！
大きなビルたちに囲まれて
ちょこんと小さく見えるけれど
決して卑屈になることはなく
「吾輩は、ビルである」とでも
言いたげな、堂々たる存在感。

黄土色の煉瓦に、並ぶ長方形の窓。
いやぁ、大きさ、色、形、素晴らしい。
周りのビルたちが
ホテルのレストランのケーキだとしたら
路地裏でひっそり営まれてる
老舗洋菓子店のお菓子のような…
あ、すみません、
キャラメルみたいな
焼き菓子みたいな
色と形のせいか
美味しそうって思っちゃいました。

キラキラきらびやかなショーウィンドウや
ピカピカに磨かれたガラス越しのお店、
普段着で入るのは
ちょっと気後れしてしまって
入れなかったりするのだけれど
この建物は私と同じくらいの体温で
どうぞ、お入り。
って言ってくれそうな気がする。
煉瓦にそっと緑の木が寄り添ってるのも
なんだかホッとして。

煉瓦の壁の窓越しに見えるお洋服たち、
すごく素敵に見えるな。
どんなこだわりを持って、
どんなものたちがあるんだろうって
引き寄せる力がある、この外観。
かなりの強みだと思います。
今はアパレルの店舗さんが入っているけれど
2021年以降、空きになる予定だそう。

中はこんな風に
良い感じに年季の入った
焦げ茶の天井や梁が剥き出しで、
じんわり温かみを感じます。
というか、木が使われているとは…！という
ひそかな驚きと感嘆。
真っ白な壁とのコントラストが美しい。
ギャラリーとして使うのも素敵だろうな。
と思ったら、以前ギャラリーとして
使われていた時もあったようですよ。
もっと昔は小料理屋だったとか。
銀座のこの場所、この風情で
飲食店、ギャラリー、アパレルとは…
色々な可能性を秘めたる
懐の深さもまた素晴らしい。

中から見る大きな窓も
外の風景を素敵に切り取ってくれて。
ここから見る銀座の街角はどんなかしら。
おお、一部天井が抜けてて吹き抜けに。
小さな建物だけれど
白い壁に窓、吹き抜けのせいで
スッと開放感があって
随分と垢抜けた印象。

2階の床はフローリングで
深みのある色艶、非常に品があります。

照明や什器によって
色々な表情を見せてくれそうな空間。
それに加え窓の可愛さが
グッと引き立ててくれることでしょう。

昭和7年築だそうで、
西暦にすると…1932年生まれ…
なんと88歳とは！
いやはや、お美しいです。
戦火を生き延び、
街が目まぐるしく生まれ変わっていくのを
この場所で見つめていたのですね。
銀座という、あらゆる新しいものを
生み出し、受け入れ、発信し続ける場所で、
ずっと、じっと。
知性すら漂うこの凛とした佇まい、
見習いたいものです。
この場所を更に活かし輝かせてくれる
素敵な出会いがあらんことを…！