一目惚れと言ってもいい出会いだった。
多分、大好きな絵本の影響なんだけど
子どもの頃から、
「そらいろのおうち」に住むのが夢だった。
一瞬で私の心を鷲掴みにした、
この空色のおうち。
青空の下、緑のお庭、
かわいい平屋の、空色のおうち！

「築40年は超えてるんですよね〜」
て言う不動産屋さんの声を後ろに
私はもうこの佇まいに
すっかり心を奪われてしまっていて。
レトロ可愛い型版ガラス、
木枠も空色、白い扉は雲かしら。

引っ越してきた初日は嬉しくって、
ひたすら畳をゴロゴロ転がってみたり
庭の方に足を投げ出して
お茶タイムを楽しんだりした。
柵越しのお隣さんに
見られてにっこり微笑まれた。

雨が降らない限り、
朝のジョギングが日課になった。
まだ陽が昇るちょっと前くらいに出発し
逗子海岸の方まで出て
森戸海岸まで、
海沿いをしばらく走る。
その後は気の向くまま、
葉山御用邸の方だったり、
山の方へ向かったり。
どこにどんなお店があるのかも
大体把握できてきた。

帰る頃には少しづつ高くなってきた
太陽の日差しをジリジリと受け
汗がにじんでくるのを感じながら
家までの道を一気に走る。

ガチャリと鍵を開けて
スニーカーをポイポイッと脱ぎ捨て
靴下も脱ぎ捨て
部屋の窓を開け放ち

畳の上にあぐらをかいて
自販機で買ったサイダーのプルタブを引く。
走ってしまったせいか、
プシュッと音と同時に溢れ出す泡を
ズズーーッと吸う。
プハーーーッ、美味しい。
風が通り抜けて
首筋の汗が心地よく冷やされていく。
缶を横に置いて大の字に寝転がる。
ふくらはぎの裏に
ぺとりと貼りつく畳の感触。
早朝に庭に干したシーツは
もうすっかり乾いてパタパタ
はためいている。
陽射しが白いシーツに反射して
部屋がより一層明るくなる。

その後は朝風呂。
夜よりも朝に入るのがお気に入り。
朝の光が気持ち良いこのお風呂場。
この家に住み始めてから
心も体も
どんどん余分なものが削ぎ落とされて
かなり身軽になってきた気がする。

最近はパンよりごはん派。
納豆、卵焼き、あとは鮭を焼いたり。
あと、夜に多めに使って
冷蔵庫に入れておいたお味噌汁。

ちゃぶ台の前に正座して
「いただきます」。
ひと汗流した後のごはんは
最高に美味しい。
炊き立てごはんが大好きだから
レンジで冷凍ごはんチンではなくて
朝炊けるように毎晩炊飯器をセットしてる。

朝のルーティンが一段落したら
仕事に取り掛かる。
友達の手掛ける町づくりプロジェクトの
webサイトを作ったら
それがなかなか好評で
そこからパラパラと
webやショップカードのデザイン仕事が
立て続けに入るようになって
とってもありがたい。

海と山にはさまれて
ゆったり心地よい空気が流れるこの町、
用事がなくとも、息抜きがてら
ぶらぶらと歩くだけでも
心がストンと整ってく感じがする。
ゆったりしたカフェで
美味しいピザや
丁寧に淹れられた珈琲をいただくのも
ちょっぴり贅沢な、たまのお楽しみ。

ご近所のオーストラリアの植物専門店、
何度かのぞくうち、オーナーさんとも
よく話すようになって。
庭をもう少し賑やかにしたくて
どんなのを植えたらいいか、
今度庭を見に来てもらうことになってる。

一軒丸ごと私のおうちではなくて
壁を隔てた向こう半分に
お隣さんが住んでるの、
ちょっと安心する。
いまだに夜のトイレが苦手だったりするから。

ちょっとドキドキの打ち合わせに
向かう時なんかも
玄関を出て、ふと振り返ると
何だか嬉しくなって元気が出る。
私の背中を押してくれるおうち。
この葉山という町に流れる空気と共に
帰ってくるのが楽しみになる、
可愛く佇む、空色のおうち。
今日も一日がんばろっと。