ちりんと窓辺で揺れる風鈴。
夏の香りの蚊取り線香。
ミンミンと元気に鳴くセミ。
しっとりとした夜のにおい。

そんな夏の思い出たちを
ぎゅっと詰め込んだ、
懐かしいお家がありました。

お家に入る前からもう、
たまらなく味わい深い。
ちょんちょんと並ぶ平屋。
どんな方たちが、
ここに住んでいたのかなぁ。

昭和のころは、
道にろう石でガリガリと絵を描く
子どもたちの声が、
きゃっきゃと楽しげに
響いていたのではないかしら。

新築のピカピカマンションも
そりゃあすてきだけれど、
住民の方をどっしりと守ってきた
頼りがいのある築古物件にも、
心を掴まれてしまうのです。

なぜかいつも木の棒を持った
すり傷だらけの子どもが、
「ただいまぁ、おなかすいた～」と
玄関に入っていく姿が見える。

和室がひとつ、ふたつ、みっつ。
ご家族で住むのはもちろん、
おひとりで広々と
スペースを使うのもよさそう。

自分の家が平屋だなんて、
私ならとっても得意げな気持ちに
なってしまうと思います。
たっぷりな土地を贅沢に
使っているということですから、
そりゃ鼻も高くなるというもの。

カラカラカラ～と
気持ちのいい音が
聞こえてきそうな玄関。

靴をポイポイと脱ぎ捨てて、
「今日のごはんは～？」と
台所にかけていく子どもが
住んでいたのではないかなぁ。
「靴そろえたの？」の指摘に、
「そろえたよぉ！」と
キョロキョロ目を泳がせたり。
バレないようにこっそりと
あとで靴をそろえて、
ニシシといたずらに笑ったり。

背後でこっそり
靴をそろえていることを
実は親はわかっていて、
仕方ないなぁとこちらも
こっそり笑ったり。

どんな日々が、
このお家ではあったかな。
ついつい想像しちゃいます。

キッチンの横には、
勝手口がありますよ。
あの国民的アニメの
御用聞きのお兄さんが、
「ちわー！お届けものでーす！」って
ひょこっと顔をのぞかせそう。

あぁ、このお風呂なんて
もうほんとうにグッとくる…！
ステンレスの浴槽に、
かわいらしい床のタイル。
こうね、足をかかえて
ちょこんと入るんですよね。
そのままお風呂にぶくぶく～と
頭までもぐって、
ふよんと体を浮かしてみたり。

あら、トイレは
温水洗浄便座付きだ！
一度使ってしまったら
なかったころには戻れないから、
あるとやっぱり喜んじゃうな。

ではでは、お待ちかねの和室。

昔ながらの和室の造りに
ほうっとため息。美しいです。

床の間にはなにを飾りましょう。
ついいろいろ飾りたくなるけれど、
潔くシンプルにしたほうが
かっこいいかもしれないな。
渋い一輪挿しに、
凛とした桔梗の花をスッと。
おぉ、いいんじゃないでしょうか。

この欄間なんて、
ずっと眺めていても飽きない。
光も空気もやんわりと通して、
息苦しさを感じさせない。

チラリと横を見れば、
ゆったりくつろげそうな縁側。
坪庭の緑に癒されたり、
お風呂上りに夜風で涼んだり、
スイカの種を飛ばしたり。
住む方によって
使い方が変わる縁側。
どんな風に使いましょうか。

ちゃぶ台、置きたいですねぇ。
キッチンから運んだ料理を
ぎゅうぎゅうに並べて、
みんなで一緒に「いただきまーす！」

たらふく食べて眠くなったら、
押入れから布団を出して
ぽっこりお腹のままゴロン。

親戚や友達が遊びに来て
寝るスペースが足りなかったら、

こちらの3帖の和室をどうぞ。
来客用の布団も、
奥行きのある押入れがあれば
収納場所には困らない。

北側にも広縁がありました。
洗濯物を干す場所に
ちょうどよさそう…と
思いましたがどうでしょう。
上からも光が入ってくるし、
風がほしいな～というときは…

広縁の端にある
勝手口を開ければ、
ぴゅうと風が吹き込む。

あぁでもやっぱり、
この眺めがいちばん好きだ。
心を上手にくすぐる縁側。
皆さんの使い方はなんだろう。

私の使い方は、アイスかなぁ。
扇風機を横に置いて、
ソーダ味のアイスを
タンクトップでシャリシャリなんて、
最高の夏ではないですか。
ミーンミンミンと
パワフルに鳴くセミたちが、
きっといいBGMになってくれる。