ギリシャの洞窟に帰ろうよ
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「新婚旅行、ギリシャにしよう!」 大好きな旅行番組を見て 突然声を上げた彼。
「いやいや、まだ結婚してないし…」 「じゃあ、結婚してギリシャに行こう!」
順序が違くないか? と思ったけれど いつも行き当たりばったりの バックパッカーだった私たちには ぴったりなプロポーズだった。
あれから3年。 すっかりギリシャの虜になった私たちは 運命のお部屋に出会ってしまった。 築36年、4階建てのマンション。 間取りは1LDKで 2人暮らしにちょうどいいサイズ感。 ところどころにある ゆるいアールが気になるぞ。 あぁ、早く見てみたい! 「か、かわいい…」 一目惚れした時には こんな言葉しか出てこないものだ。 玄関からリビングへ繋がる この空間!
手でくり抜いたようなアーチに 優しいフォルムの造作棚。 壁は塗装かな。 丁寧だけれど手作り感ある質感。 まるでギリシャで泊まった 洞窟のホテルみたいだ。 この棚、かわいすぎて 頬ずりしたいくらい。 収納も洞窟の世界観に 溶け込む感じ センスある!
「このちょっとした段差もいいよね」 アールの段差を ちょこんと降りる彼。 段差が多いギリシャの 街並みをふと思い出す。 「うわぁ…綺麗」 リビングはまさに洞窟のような内装。 ポツンポツンと灯る小さな灯りと キラキラ揺らめく照明が なんとも幻想的な空間。
「青いソファ、置きたいな」 「海みたいな真っ青な色にしようよ」
ほっこりとした洞窟のような内装に パキッと鮮やかな青いソファー。 うん、似合うと思う。
床にはエキゾチックなラグを敷いて 大きなクッションを転がそう。 ゴロゴロしながら 「次はどこに行く?」 なんて旅行雑誌を広げながら 妄想旅行のはじまりはじまり。 ゆらゆら射し込む陽の光は 木製のブラインドカーテンによる 演出みたい。 ほどよく陽を取り入れながら 時間によって お部屋の表情が変わるのも 普通のカーテンにはない魅力。 それに、このニッチ。 一つ一つ形やライトの位置も異なって どこかほんわかした雰囲気。
「旅行で買った置物を並べたいね」 「小さな植物を飾ってもいいかも」
思い出をちょこんと並べて あの時はあーだった、こーだったと 何度も話したような会話をしよう。 お部屋が優しい印象なのは あらゆる角を さりげなく取り除いているからかも。 ニッチやキッチンカウンター リビングに入る角も まぁるいフォルムにすることで 閉塞感がなくなるんだから 不思議なものだ。
「ダイニングテーブルはこっちかな」 木製のブラインドカーテンに合わせて 無垢材の木のテーブルでもいいし リゾートのホテルみたいに 海に映える真っ白な スクエアのテーブルも似合いそう。
週末にはフレッシュチーズに蜂蜜かけて 旬の果物と 淹れたてのコーヒー。 世界中で集めた カラフルな食器で 朝食を食べよう。
こんな素敵なダイニングで食べたら 外食よりもおうちご飯が 楽しくなりそうだ。 「こっちがキッチンなんだね」 洞窟のアーチから顔を出して はしゃぐ彼。 スペースに余裕があるキッチンは タイルと木の扉の組み合わせが 海外ライク。
こんなにおしゃれなのに しっかり食洗機がついているなんて なんて頼れるキッチンだこと。 心躍るカラーの タイルを越えて 向こう側がベッドルーム。 サーモンピンクの腰壁が アクセントになって 温かい雰囲気。 「ここにもニッチがあるよ」
それぞれ背景の色が異なる さりげない遊びゴコロがチラリ。 たっぷり容量のクローゼットには アクセントウォールが。 リゾートっぽい 上品でナチュラルな柄が好みだな。
「ねぇ、この洗面台かわいいよ!」 ぷっくりキュートなタイルが 丁寧に敷き詰められた洗面台。 リゾートの波を連想させるデザインの棚に キラリと光るゴールドの水栓。 あら、排水管までゴールドだとは 恐れ入りました。
ゴージャスだけどやりすぎず 細部に宿るセンスの良さが まさにホテルライク。
「ねぇ、落ち着いたら またギリシャに行こうよ」 「同じこと思ってた」
ふふふと笑う彼は 一緒にバックパッカーをしていた頃と 変わらないワクワクした顔をしていた。
この洞窟のお部屋で暮らしたら 私たちの旅は ずっと続くような気がするんだ。
文・よしだゆき 街散策とタイルをこよなく愛するフリーライター。元住宅情報誌編集者。築35年の中古マンションをフルリノベして暮らす2児の母。