「ちゃん」付けで呼んで、と言う伯母
この物件は現在は募集終了している可能性が高いです。過去物件のアーカイブとしてお楽しみ下さい。
好きでしょ、と 買ってきてくれたケーキ。
プリンアラモード、 モンブラン、 桃のタルト。
1日一個ずつだよ、 一気に食べちゃダメだよ、と言って 自分はチーズケーキをお皿に移す。
定期的に遊びに来る伯母。
勝手知ったる様子で お湯を沸かしてコーヒーを淹れる。
お気に入りのかわいいキッチンと、 無垢の床。
うちもリフォームしたいわ、と 木板を摩る。
和室にぶら下げてるのは 「似合うと思って」と 誕生日に買ってきてくれたブラウス。
ちょっとサイズがきつくて 「あれ?」と二人で私の二の腕をたぷたぷした。 なのにケーキを買って来る。
コーヒーを飲み終えた頃に、 外から聞こえる笑い声。
この団地には無料の菜園がついている。 伯母は私が育てたローズマリーを べた褒めしてくれた。
菜園にはピザ窯もあって 時々ピザパーティーが開催されている。
5階の貸しスペースは 色々とレッスンやイベントが 開かれている。
以前ふたりでピラティスに参加した。 私より伯母の方が身体が柔らかかった。
帰り際に、 最近使ってよかったから、と ボディソープのおすそ分けをもらう。
私からはローズマリーと 今年育て始めたシソを渡す。
エントランスの青い箱は ちいさな図書館。
「小さい頃は 何度も『泣いた赤鬼』を読んだね」 と言う。 エントランスを通る度に、言う。
それじゃあね、と別れたあと、 やっぱり桃のタルトも食べちゃいたいなって思った。
文・戸田江美
1991年生まれ。デザイナー。おばあちゃんの仕事を継いで荒川区のマンションの大家をしている。落語が好き。@530e
いま募集中の物件一覧
お部屋探しに!今空いている物件だけを絞り込んで探せます
詳しくはこちら