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令和時代の「浦島太郎」

この物件は現在は募集終了している可能性が高いです。過去物件のアーカイブとしてお楽しみ下さい。

ある日のことでした。
北海道の広い海に、
珍しくとぷんと浮き出た1匹の亀。
よくよく見るとその背中に、
ひとりの人間を乗せています。

「僕が送っていけるのは
ここまでですよ、浦島さん」と、
亀はつれない声でポソリと言います。

竜宮城での浦島太郎の豪遊に、
海の生き物はみんな
それはそれは疲れ果て、
早く人間界に帰そうと
亀が運んできたのでした。

「あれぇ、なんだこの村は?」

浦島太郎はぼやきます。
竜宮城で面白おかしく
どんちゃん騒ぎをしているうちに、
いつの間にか時代は2020年。
見たこともない町の姿に、
目をまんまるくしたのでした。

しかしそこは
気のいい浦島太郎のこと。
よく言えば楽観的、
わるく言えば考えなし。

「なんとかなるか!」と
ケラケラと笑いながら、
「こちらが最後のお土産です」と
亀たちが用意してくれた
ひとつの家へと向かうのでした。

「雨風がしのげられたら、
それだけで十分だ」と
飄々と部屋の中に入った浦島太郎。
初めて見るロフトに、
目をキラキラと輝かせます。

「屋根裏があるのかい!
やっぱりこれくらい
趣向を凝らした家がいいよなぁ!」と、
先ほどの発言を
くるっと180度変えて、
新しい自分のお城に
ニシシと腰を据えるのでした。

さてさて、時代を超えて
始まった浦島太郎の新生活。

ハチャメチャに
なろうかと思いきや、
持ち前の明るさと社交性で
あれよあれよと北海道の
漁師たちと仲よくなり、
今では楽しく令和の暮らしを
楽しんでいるようです。

なにか困ることがあれば、
「まーたなんかあったんか!」と
面倒見のいい漁師の親方が
家までやってきてくれるのでした。

亀たちが選んだお部屋は、
さすが海の生物というところ。
海の中にいるような空間に、
浦島太郎もご満悦です。

暮らし始めてばかりのころは、
家具をまったく置かず
過ごしていた浦島太郎。

本人は床での生活に
満足していましたが、
おせっかいを焼くのが
好きな親方は黙っていません。

「なんだこの殺風景な部屋はぁ!」と
ぷりぷりと怒りながら、
リビングテーブルや椅子を
用意してくれたのでした。

最初は窓のクレセント鍵の開け方が
わからなかった浦島太郎も、
今ではカラカラと上手に
開閉できるようになりました。

「おーい、なにしてる?」と
窓の外に呼びかけることが
多いから、練習になったのです。

窓を開けるとお隣さん。
最初は警戒されていましたが、
今ではすっかり親しくなり、
一緒にお酒をたしなむ仲です。

海の生物とだって
お酒を酌み交わしたのですから、
初めて話す人にも
壁など作りません。
誰にだって気負わずに
声をかけられるところが、
令和の浦島太郎の強みなのです。

浦島太郎がこのお部屋で
気に入っているところは
たくさんありますが、
窓の多さもそのひとつです。

天気のいい日は
窓をすべて開け放して、
「気持ちいいなぁ」と
床で眠りに落ちるのでした。

お料理は大得意の浦島太郎。
釣り上げた魚を上手におろし、
ひょいと口に入れていきます。
今では完璧に使いこなせる
2くちのガスコンロで、
魚をカラッと揚げたり、
しっとり煮たりもします。

1匹まるまる焼きたいときは、
「こいつは賢いやつだなぁ」と
大きな信頼を寄せている
魚焼きグリルの出番です。

換気扇が動いているのに
気がついたとき、
浦島太郎は忍者が天井裏で
煙を吸っていると思って
「なにやつ!」と
それは慌てたものでした。

大騒ぎしているのを
お隣さんが気づいて、
どうどうどうと
たしなめてくれたのです。

海の世界が恋しくなると、
浦島太郎は湯船に少し
ぬるめのお湯をはって、
目を閉じてつかります。

体をゆらゆら揺らしていると、
海の中で亀の背中に乗ったときの
ワクワクした気持ちを
思い出すことができるのでした。

それでも、どうにも
恋しくて仕方がないときは…

このロフトに、
トントンと上ります。
ロフトで過ごすときだけは、
浦島太郎はとってもしずか。

この空間だけは、
親方もお隣さんも
足を踏み入れたことがありません。

浦島太郎にとって、
海の記憶を思い出すことができる
自分だけの空間なのです。

ぼんやりとやさしい
照明をひとつ付けて、
床にゴロンと寝転がります。

青い壁が、天井が、
きらびやかな竜宮城を
鮮明に思い出させてくれるのです。

「あぁ、また行きたいなぁ」
浦島太郎の小さな声が、
まるで深海に溶けていくように
ゆるゆると消えていきます。

このお家を選んでくれた亀に
心の中でお礼を言いながら、
そっと目を閉じるのでした。

出窓には、海から持ち帰った
お土産が並んでいます。
七色に光る貝殻に、
水のしずくを固めた首飾り。

とても珍しいものばかりで、
親方やお隣さんは見るたびに
「どこで買ったんだ?」と
羨ましそうに尋ねます。

ただ、ひとつだけ。
「なんだか不気味だなぁ」と
好奇心旺盛なふたりが
触らないものがありました。
紐でグルグルに巻かれた、
豪華な装飾の玉手箱です。

「中を開けてみたいんだがなぁ」と
興味津々で話す浦島太郎を、
ふたりは必死に止めます。

「なんかおかしい気がするぞ」
「触らないほうがいい」
「なんなら捨ててきてやるから」

玉手箱を窓に飾っておきたい
浦島太郎でしたが、
ふたりがいい顔をしないので、
仕方なく見えないところに
隠しておくことにしました。

押入れの一番奥に、
ひっそりと隠された玉手箱。
「捨てられてたまるかい」と、
浦島太郎はニンマリと笑います。

「どれ、そろそろ
玉手箱を開けてみようか」と
浦島太郎が決心する日は、
果たしてくるのか、こないのか。

親方とお隣さんが
止めてくれることを願いながら、
今回のお話はこれにて終わり。
めでたし、めでたし?
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