渋谷の神宮前という一等地で
ひときわ個性を放つ建物。
今から５６年前、
東京オリンピックの年に誕生した、
デザイナーズマンションの
先駆けとも言える
「ビラ・ビアンカ」。

箱を積み上げたような
一戸一戸が宙に浮いてるかのような
ユニークな表情と
直線と曲線が
複雑に組み合わされた構造。
ずっと見ていても飽きない
力強さと美しさがあります。
洋風でありながら
梁を組んだような形に
和の匠っぽさも感じます。

その昔、最先端の分譲マンションでもあり
海外の雑誌にも
取り上げられたこともあるそう。
著名な文化人の
晩年の住まいでもあったり
時代を象徴する様々な方が
住居やオフィスを構えたり
地下に伝説的なクラブがあったり…
名前とロゴ、エントランスからも
どこか華やかさと品を感じます。

共用部には美しいガラスブロックの
壁がドーンと弧を描いています。
ガラスブロック、レトロ系マンションの
象徴的なもののひとつですよね。

各住戸の玄関扉は
厚みのある無垢の木を
手彫りしたものだそうで
外観の無機質さとは対照的な
温かみを感じます。

中に入ると圧巻の抜け感、
長く貫くダクトがかっこいい…

リビングはなんと30畳という広さ！
バルコニーに囲われた
サニタリースペースとはユニーク。

味の出た飴色のフローリングも
素晴らしいし

部屋の三面が大きなガラス窓で
囲われているため、

開放感がすごいです。

ドアや照明などは時代を感じさせるもので

これはこれで味わいがあって
非常に良いと思うのですが
DIYや改装したい場合は
オーナーさんに改装工事内容を伝え
承諾を得られればOKとのことで
好きなものに変えることもできるようです。

ユニットではないタイル張りのお風呂や
ホテルのような重厚な洗面台、
ガラスブロックの窓のあるトイレ…
今のマンションでは
なかなか見ることのできない
手の込んだつくり。

このガラスには時代の変遷、
どんどんと変わりゆく東京の景色を
写し出してきたのでしょう。

目下には明治通り、そして

キッチンからは六本木ヒルズも見えます。

大都会のバルコニーで
どんな時間が流れてきたのでしょう。

時代を先取りする華麗なる人たちが集まり
賑やかな時を過ごしてきたのでしょうか。

屋上にも出ることができ
一世代前の、どこか近未来的な
デザインなども楽しめます。

昭和の高度成長期という時代に建てられ
未だ衰えぬ人気があるこの物件。

あちこちにどこか郷愁も感じる
この建物や部屋の風景は
シャープな写りのスマホやデジカメではなく
ザラっとした、温もりある質感の
古いフィルムカメラで残したい、と
思ってしまう空気感なのでした。
2年の定期借家ですが
この昭和の遺産とも言えるマンションで
過ぎた時に思いを馳せつつ
都会を見下ろす優雅な生活など
いかがでしょうか。