京町家が好きです。

狭い間口から奥行へと広がる
工夫が凝らされた室内。
光や風がほどよく通り抜けて
家が呼吸をしているかのような気持ちよさ。

小さなアパートを出て
そろそろ家を構えようか、
なんて話していた私たち。

場所は世界遺産「元離宮二条城」の北側。
子猫がゴロゴロと
日向ぼっこしていそうな路地に
ひっそり佇む京町家がありました。

歴史を辿れば、
明治44年に建築されたのだとか。

まっすぐ伸びる木の格子に
提灯のようなかわいいライト。
なんだか背筋がスッと伸びます。

玄関扉を開けると目にとまるのは
ガラス小窓に反射する
洋風のランプ。

このギャップ、入り口から
やられました。

小さな間口でも
光をたっぷり
感じられるような工夫があちこちに。
リビングが2階にあるのもそのひとつ。
まずは1階から見てみましょう。

玄関から繋がっているのは
3.2帖の多目的ルーム。
天井や柱のどっしりした木に
すっきり収めたダウンライトが
小さなお部屋を広く見せてくれます。

さぁ、この部屋はどう使おう。
お客様用のお部屋にしてもいいし
デスクを2台並べて、
テレワーク部屋にしてもいい。

読書が趣味の
彼の書斎にしようかなと考えていたら
「君のアトリエにしたらどう？」
なんて突然言うからビックリしちゃった。
忙しくて離れていた趣味の油絵、
久々にやってみようかな。

引き戸を開けると
7.2帖のベッドルームが待っていました。

「お庭が見える！」
と思わず声が揃っちゃった。

小さな坪庭からは
優しい光が差し込んでいます。

この壁紙、レトロでかわいいなぁ。
柄は手毬でしょうか。

どこか懐かしくて
すぐに好きになっちゃった。

美しい建具に見とれていたら
なんと向かって右側の扉は
洗濯機置き場。
手前はクローゼットですって。

パジャマを脱いで、洗濯機に入れて、
その日の洋服を取り出す
朝のルーティンがとてもスムーズになる。
「これでもう、
　パジャマ脱ぎ捨てないでよって
　怒られないね」
彼はニヤッと笑う。

ベッドルームのすぐ隣には
洗面室とバスルーム。
お風呂上がりにすぐゴロンってできるの、
とてもいいなって思った。

料亭にありそうな
和モダンの洗面台！
コロンとしたマットな洗面ボウルに
絶妙な色合いのボーダータイル。
それに、坪庭を眺めながら
身支度ができちゃう。

つっかけサンダル履いて
歯ブラシくわえながら
坪庭でしゃがんでいる
彼の後ろ姿、想像できるなぁ。

「ねぇ、すみっこで何か育てようか」
「鉢植えの紅葉なんてどうかな」
「茗荷と大葉も育てて、
　素麺に入れようよ」

小さなお庭でも
これだけ夢が広がるんだから
楽しくて仕方ない。

お風呂はなんと、木張りの壁です。
柔らかい空間、癒やされそう！
乳白色の入浴剤を入れたら
温泉気分で長湯しちゃうなぁ。

色んな木が使われていて
見た目にも楽しい廊下を通り
階段で2階へ。

「なんだか明るいね」
そう言って顔を上げると、
あ、天窓がありました！
古き町屋の名残なのかな。
天窓は採光と
熱のこもった空気を外に逃がす役目を
果たしていたと聞いたことがある。

年月を感じる梁が
光を受け止めて
ほどよく分散するのも味わい深い。

ベランダに面した10帖のリビングは
優しい光が入ります。

「この天井、ずっと見ていられるなぁ」
ダイナミックな現しの梁に
勾配天井。
最大限に天井を高くして
開放感のある空間に。

真ん中の柱を境目にして
ダイニングとリビングに分けようかな。

ウッドフレームの
2人掛けソファなんてどうだろう。
背もたれにどっしりもたれたら
天井を見上げて梁の美しさを眺めよう。

キッチンの手前には
小さなダイニングセットを。
背筋を伸ばして
「いただきます」
ってしっかり手を合わせるのが
我が家のルール。

木の扉と合わせた石風のワークトップ。
落ち着いた印象のダークなタイル。
和の雰囲気も大切にしながら
IHコンロで使いやすさも兼ね備えた
大満足のキッチンです。

大きな窓をガラッと開けて朝食を作ろう。
だし巻き卵に
豆腐のお味噌汁
炊きたてのご飯には
彼の好物の佃煮も忘れずに。

週末のブランチは
ご近所に有名なパン屋があるようだから
焼きたてを調達するのもいいな。

すりガラスの引き戸の先にある
木のドアを開けると
お手洗いがありました。

ちょっとした古建具にも
新しいものにはない趣を感じて
惚れ惚れする。

近くには緑豊かな二条公園や
個性的なお店が集まる堀川商店街も。
2人でお散歩をするたびに、
素敵な発見がありそう。

継承と新しさを
絶妙に融合させた京町家。

時を経て増した味わいを守りながら
歴史を受け継いでみるのも
いいかもしれない。