美大を卒業して10年
この物件は現在は募集終了している可能性が高いです。過去物件のアーカイブとしてお楽しみ下さい。
あの頃は大学近くにアトリエとして 月3万円のアパートを借りてた。 2人で割るから、月1万5000円。
2限終わってから校門に集合。 自転車で大学近くのスーパー銭湯行って、 青空眺めながら露天風呂入ったあと、 コーヒー牛乳飲んで、 自転車でボロいアパートに帰って ゴロゴロしながら 漫画読んだ日を思い出す。
10年経ってまた 一緒に住むなんて思ってなかった。
半年に一回くらいある 仕事でめっちゃ落ち込む日。
延々とメソメソ言ってたら 「食べて忘れよう」 って、手巻き寿司の準備をしてくれる。
漫画『3月のライオン』で読んでから 2人でハマった、 カロリー度外視の手巻き寿司パーティー。
エビアボカドマヨネーズに、 ごま塩ユッケに、 イクラにトロタクアン。
お皿にぎゅうぎゅうに乗せて、 ご飯何合も炊いて。
「あ、恒例のですか?」 ってシェアメイトたちも集まってくる。
6部屋あるこのシェアハウスに 住むことを決めたのは、 フリーランスになったから。
家探しをする中で この一等光る物件を見つけてしまった。
昭和三年、 私のおばあちゃんが生まれた年に 建った家。
惚れ惚れする欄間、 ガラスの引き戸、 アンティーク家具、 縁側まである和風なおうちなのに
こんなかわいい洋室もある。
内見の時、 「鳥!かわいい!」って叫んで 何枚も写真を撮った。
離れの洋室は、 映画のワンシーンのような佇まいで。
何年も連絡を取ってなかったのに ふと、ここでカリグラフィーを教える あの人の姿が浮かんだ。
久しぶり、って連絡したら 「じゃあカリグラフィー教室始めようかな」 なんて言うの。 冗談だと思った。
あれよあれよという間に 2人で引っ越してきて。
仕事に飽きたら ぶらっと庭を歩いて 縁側に腰を落ち着ける。
ここに来てから始めた趣味、 花の写生。
描いてるうちに手元が暗くなって、 日が暮れて。
お風呂から上がって髪を乾かしてると、 おもむろに後ろの椅子に座ってくる。
「最近越してきた人、 お風呂でめっちゃスリラー歌ってない?」 っていうのが、 近頃の私たちのホットな話題。
このシェアハウスには 色んな職種の 色んな人が住んでいて。
べったり関わりはしないけど 一緒の空間にいるから やっぱり何かしらの刺激や影響がある。
10年前、 そういえば美大生活って こんな感じだったかも。
わたしの描く絵は 庭に生えている色が増えた。
「最近の絵、いいね」 って言ってくれたから、 お礼にカリグラフィー書いてる姿を 描いてあげた。
文・戸田江美
1991年生まれ。デザイナー。おばあちゃんの仕事を継いで荒川区のマンションの大家をしている。落語が好き。@530e
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