なんて立派な洋館なんだろう…。 庭に面した大きなテラス。 右端の連続アーチもたまりません。 広大な森の庭に建つ洋館が 賃貸入居者を募集中です。 え、ここ、借りられるんですか！？

昭和10年頃に当時のあるじが 結婚を機に建てたという スパニッシュ様式の建物。 戦後は一時、英国領事館に貸していたいた 時期もあったとか。

母屋にはお部屋が9つ！ 見どころが満載ですよ。

玄関を開けると広がるホール。 ステンドグラスのあるスペースは待合室。 来客が重なった時には、 ここで待っていただいたそうです。 天井のアーチがなんとも優雅。 装飾的な梁と乳白色の照明にも 目をみはります。 よく見ると玄関扉や飾り棚も素敵で、 あちこちに目移りしてしまう…。

お部屋も期待通りの美しさ。 大きな格子窓にガラスの引き戸。 どことなく、古い学校を思わせる たたずまいです。

隣接する2面が窓ガラスになっているのは 珍しい造り。 外の緑と相まって、幻想的です。 つり下がっている星のような 電灯も素敵。

洋室には全てマントルピースが 備えて付けてあるそうです。 また、作り付けの家具は、神戸の名店、 永田良介商店に特注したものとのこと。 どこもかしこも抜かりなく高級です。

こちらのサンルームが なんとまあ素敵なこと！ バリエーション豊かな色味のタイルに 天井まであるガラスの建具。 観葉植物やソファーセットを置けば さぞかし絵になるでしょうね。

お庭に面したお部屋には、 直接出入りができるように 大きな開口が設けられています。

船底天井に太めの木材が頼もしく、 見た目もいいですね。

こちらは1階にある和室。 洋風の格子窓ですが、 違和感なくお部屋に溶け込んでいます。

格子で切り取られる緑の美しさに 思わず見とれてしまいますね。

格子のほかに、ダイヤモンド型の建具も 多くあしらわれています。 どちらにも気品があり目を奪われる。

2階のふた間続きの和室は 本床の間の書院造り。 幾何学模様めいた欄間の意匠も 素晴らしく、格調高いお部屋です。 縁側の端まで続く大きな窓からは 光があふれています。

広いお部屋ばかりでしたが 意外にも、こぢんまりとした 和室もあるそうです。

階段ホールですら、この美しさ。 レトロなたたずまいに胸を打たれます。

レトロといえば、敷地内には こんな、おくどさんも残っているそうです。 レトロというより、 もはや歴史資料ですね。

お隣には井戸もありました。 貴重な設備、このまま残して 欲しいものです。

現代のキッチンも ちゃんと室内にありますよ。

その他、水回りは改装されていて 便利な仕様になっています。

トイレは三カ所あります。 床の市松模様がしゃれていますね。

最近ではスクール事業が行われており、 その際、北東側にプレファブ2階建ての 建物が増築されています。 爽やかなブルーグレイの建物です。

いやはや、どこもかしこも 優美な造りで、眼福。 外に出ると 玄関アプローチの広さにも驚きます。 緑に囲まれた、スパニッシュ様式の 赤い瓦と白い壁。 絵になるなあ。

雰囲気を壊さない門塀も感動します。 まるで古い少女漫画に出てくる お嬢様の家みたい。 お付きのねえやが日傘をさして、 深窓の令嬢が女学校へ…なんて姿が 見られたかもしれませんね。

住所は神戸市になりますが、 最寄りは名店が立ち並ぶ 阪神電鉄芦屋駅。 徒歩9分の距離にあります。

さすがのお家賃なので、 個人宅での利用よりは 事業利用になるかと思いますが、 周辺は静かな住宅地なので、 不特定多数の来客がある施設は 現実的ではないとのことです。

アイディアとしては、美術・ハンドメイド 作家の工房兼住居兼ギャラリーや 会社事務所を兼ねたショールーム、 スクールやシェアオフィス、予約型の 各種サロンなどでしょうか。 飲食や物販を行うマルシェを時折、 季節のイベントとしてもうけると 地域との交流が深まりそう。

周りが開発されていくなか 手厚く守られてきた広大な森の庭と、 建設当時のたたずまいが 今でも残る貴重な洋館。 この景色を守り受け継いでくださる方、 ぜひに！

文・葱山紫蘇子 大阪で娘3人息子1人と暮らす独り身。元劇団維新派役者竹山らいち、元ミニシアター従業員、元介護職。建物と書き出し小説と漫画と毛布のヘリが大好き。 Lit.Link